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日記です。 読み捨てて頂ければ幸い。

バレンタインデー

2017.01.30 (Mon) 20:32 Category : 小話

イルカ先生がうだうだ悩んでるので読みにくいかも知れません。力量が無くてすみません。
バレンタインデーの前に勝手に撃沈するイルカ先生の話。



 二月を目前にして、食料品店のお菓子売り場はチョコレート菓子が幅を利かせていた。売り場では女の子たちがきゃっきゃと話しながらチョコレートの並ぶ商品棚を見ている。
 イルカは食料を買いだめしに来たついでに、お菓子売り場を見ていた。この時期のチョコレート菓子が並ぶ辺りは何となく男子禁制のような気がして、その隣の焼き菓子が並ぶ棚の前に立つ。しかし目の前のクッキーより横のチョコレートの方が気になっていた。
 イルカには好きな人が居た。最初は気になる程度の相手だった。それがいつの間にか想いを寄せるようになった。けれどその想いは伝えられないでいた。
 密かに想い続けているのは、相手も男だったからだ。男から好きだと言われても普通困るだろう。それに気持ち悪いと思われたらつら過ぎる。
 でもバレンタインデーにかこつけてチョコレートを渡すだけなら、好きだと言わなくても渡すだけなら。
 いつもお世話になっているからと言えば、きっと受け取ってくれるだろう。
 想いを込めたチョコレートを受け取ってもらえたら、たとえ相手がイルカの気持ちには気付かなくても、それだけでイルカは満足だった。
 でもやっぱり迷惑かも・・・いや単にお菓子を渡すだけだし、好きとも言わないし・・・と何度も悩んだ末に、イルカはお菓子売り場に来ていた。実はチョコレートが並び始めた頃にも同じように悩みながらお菓子売り場へ来ていたが、決心がつかなくてその時は買えず終いだった。
 イルカは今日こそはと思いつつも、チョコレート菓子の棚の目の前にすら立てず、クッキーの箱を眺めていた。本当はその隣の、包装されたチョコレートが欲しかった。
 渡す渡さないは兎も角として、せめて買うだけでも・・・そうだ、買ってから考えよう。イルカはふとそう思い、それまで悩んでいたのがパッと晴れた気分になった。
 早速商品棚のチョコレートに手を伸ばす。
 棚に手が届く前に声を掛けられた。
「イルカ先生もお菓子食べるんですね」
 イルカが声の方へ顔を向けると、そこにはカカシが買い物カゴを提げて立っていた。非番なのか私服姿だった。
「か、カカシ先生」
 途端にイルカの顔が赤くなった。まさかここで遭遇するとは思ってもなくて一気に挙動不審になる。
 何を隠そうこのカカシがイルカの想い人だった。
 カカシはそんな事は知らずにイルカに話しかけた。
「意外。お菓子好きなんですか?」
「えっ。・・・あー、そうなんです!つい買っちゃうんですよね」
 イルカは目的のチョコレートではなく、その隣のクッキーを取って自分のカゴに入れた。
 近くに居た女の子たちが、チョコレート作りの相談をしながら売り場を離れて行った。カカシがそっちに目を向ける。
「もうすぐバレンタインデーですね。イルカ先生、たくさん貰えるんじゃないですか?」
「はは、まさか・・・。毎年貰えれば良い方ですよ」
「でもお菓子が好きなら貰えると嬉しいですね」
 カカシがチョコレートが並ぶ棚の方へ歩いて行く。商品を眺めてはいるが手は伸ばさなかった。
 イルカはカカシについて行った。
「カカシ先生こそたくさん貰うんじゃないですか?」
「あー、俺は・・・甘い物好きじゃないので、貰っても困るんですよね。自分で食べれないのでいつも人にあげちゃってます。あ、これ内緒ですよ」
 カカシが言った。そのままお菓子売り場を通り過ぎる。
 イルカは黙り込んだ。
 カカシはレジの手前まで来た所で、取り忘れた物があると言って売り場へ戻って行った。イルカは挨拶だけして、そのままレジへと向かった。
 会計を済ませ、買い物袋をぶら下げてぼんやりと家路に就く。
 結局チョコレートは買えなかった。
 しかもカカシにチョコレートを渡そうと考えていたのに、行動を起こす前に計画は潰えた。
 まさかカカシが甘い物が嫌いだとは思わなかった。人にあげてしまうくらいなのだから、普段から甘い物は全く食べないのだろう。
 チョコレートが駄目なら他の物をあげればいいのではないかーー普通ならそう考える。でもそれでは駄目だった。
 チョコレートだからさり気なく渡せるのであって、他の物をわざわざ選んだと思われては、カカシに引かれてしまうかも知れない。
 イルカは告白がしたい訳ではなかった。ただ自分の気持ちを少しだけ形にして、自己満足を得たいだけだった。
 自分の想いを伝えて嫌われるより、カカシと良い関係で居たかった。少し話をするだけの、顔見知りよりは親しい上忍と中忍という関係でよかった。
 だから「バレンタインデーだから」「差し入れに」「お世話になっているから」と理由をつけて気軽に渡せるチョコレートが最適だった。
 それなのにカカシは甘い物が嫌いだと言う。それを、聞いてしまった以上、チョコレートを渡す訳にはいかない。
 かと言って、チョコレート以外の物は渡せない。
 イルカは溜め息を吐いた。バレンタインデーなんか来なければいいのにと、子供のような事を思った。
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