n - caramelizing
日記です。
読み捨てて頂ければ幸い。
留伊だけど留出てこない
2017.06.02 (Fri) 12:52 | Category : 小話
書き途中で前後の話がありません。
この話の前に、伊作は留三郎に「お前の不運に付き合わされるのもお前の尻拭いも金輪際ごめんだ!」と言われている設定です。
落ち込んでる伊作くんを雑渡さんが慰めます。…って、留伊じゃねーじゃんw(今気づいた
この話の前に、伊作は留三郎に「お前の不運に付き合わされるのもお前の尻拭いも金輪際ごめんだ!」と言われている設定です。
落ち込んでる伊作くんを雑渡さんが慰めます。…って、留伊じゃねーじゃんw(今気づいた
*
伊作は用具倉庫の屋根で膝を抱えていた。
留三郎の言葉が頭の中を巡って、今にも胸が張り裂けそうだった。
「伊作くん」
不意に名前を呼ばれて顔を上げると、すぐ隣にタソガレドキ忍軍組頭、雑渡昆奈門が座っていた。
普通ならそんな肩書きの者が忍術学園の敷地の、それも用具倉庫があるような奥まった場所に居ていいはずが無いのだが、伊作は特に驚かなかった。
「雑渡昆奈門さん」
「元気が無いねえ」
伊作が黙っていると、雑渡は突然「がっかりして〜めそめそして〜どうしたんだい〜♪」と歌い出した。
伊作は笑いもしなければ呆れもしなかった。
「雑渡さん・・・すみません。ぼく今はそんな気分じゃなくて・・・」
「そうか。それはすまなかった」
雑渡も特に笑いもせず言った。彼の場合、坦々としているのはいつもの事で、感情を表に出す事は殆ど無かった。そもそも包帯と頭巾で顔の大部分が隠れている。
雑渡は一瞬黙って伊作をじっと観察した。
「食満留三郎くんと喧嘩でもしたのかな?」
何も話してないのに図星を突かれ、伊作は驚いた。
「な、な、なんで分かったんですか!?」
「数多くの不運にもめげない君が落ち込むんだから、余程の事だろう?」
雑渡が言った。その通りではあったが、何故それで食満留三郎の名前が出てくるのか伊作には分からなかった。
どうやらこのタソガレドキの忍組頭は、思った以上に忍術学園の内部事情に詳しいらしい。
伊作は素直に凄いと思い、同時に恐ろしくも感じた。伊作はいつも親しくして貰っていたからか、それを特別意識した事は無かった。
「喧嘩をしたと言うか・・・留三郎とはずっと寮で同じ部屋で、うまくやってたと思ってたんですが・・・いつもぼくが迷惑かけているもので・・・愛想を尽かされたというか、とうとう見放されてしまいました」
伊作は情けない自分を隠すように笑ってみせた。でもうまく笑えない。
「留三郎は喧嘩っ早いけど、すごく優しくて、後輩の面倒見もよくて」
伊作の脳裏に用具委員会をまとめる留三郎の姿が浮かんだ。
「ぼくが困っていると、留三郎は同室だからって言って、いつも助けてくれて・・・」
伊作が困っていると、留三郎はいつも声を掛けてくれた。手を差し伸べてくれた。
その度に留三郎は騒動に巻き込まれたり、伊作と一緒に不運な目に遭った。
それでも留三郎はいつも助けてくれた。
ーー気にするな、同室だからな。
留三郎はいつもそう言ってくれた。
「同室だから・・・同室だから、留三郎はいつも我慢してたんだ!ぼくが迷惑をかけても、いつも・・・」
留三郎には本当に迷惑だっただろう。ただ同室というだけで付き合わされたばっかりに、いつも不運に見舞われる。
「ぼくはそれに気づかないで、留三郎が優しくしてくれるから甘えて、自分だけが良い関係だと思ってて・・・」
もううんざりだと言った留三郎の声を思い出した。留三郎がどんな顔をして言っていたか思い出せない。思い出したくなかった。
「本当は留三郎はぼくのことなんて嫌いだったんだ!同室だから、仕方ないから面倒見てくれてただけだったんだ!」
手を差し伸べてくれる留三郎の笑顔を思い出して、伊作はもう我慢できずにわあわあ声を上げて泣き出した。
みっともないと思う。忍者なのに、情けないと思う。でも悲しくてつらくてどうしようもなかった。それを隠しておけない。
忍者なら雑渡のように感情を表に出すべきではないのに。
伊作がこぼれ落ちる涙を両手で拭っていると、雑渡が伊作を胸に抱きしめた。
「・・・っ」
体の大きな雑渡の腕は優しく力強くて、伊作は必死に飲み込もうとしていた涙を再び溢れさせた。
雑渡は何も言わずに伊作に胸を貸してくれた。
伊作は一頻り泣くと、そっと雑渡の胸から離れた。恥ずかしくて、ちらちらと雑渡を見上げる。
「す、すみません。雑渡さん」
「いや・・・。少しは落ち着いたかね」
「はい。ありがとうございます・・・。雑渡さん、お父さんみたいですね」
頼り甲斐があると思ったので伊作はそう言ったのだが、雑渡は気を悪くしたのか一瞬眉を顰めた。
「落ち着いたのなら良かった。そしたら、私はもう行こう」
「えっ。もう行ってしまうのですか
?」
立ち上がった雑渡を、伊作は見上げた。
「まあ・・・私は君の泣き顔を見に来た訳ではないのでね。泣いてない時にまた来るよ」
「えっ」
予想外の言葉が返って来たので、伊作は目を丸くした。雑渡は伊作のその表情を面白そうに眺めた。
「そうだ。伊作くん。よかったら暫くウチに来ないか?」
「えっ!?ウチって・・・」
「タソガレドキ忍軍」
「えっ・・・ええっ!?」
雑渡は伊作の手を掴んで強引に立たせた。伊作は屋根の斜面で滑りそうになったが、雑渡の腕が支えた。
「君ももうすぐ卒業だろう。その前の社会研修ということで。悪くないと思うんだけど?君が良いなら、学園長殿には私が話そう」
伊作は雑渡が冗談を言っているのだと思ったが、雑渡は至って本気のようだった。
「良い気分転換になると思うんだけどねぇ」
雑渡が囁きかける。
伊作は、行きますと答えていた。
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