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日記です。 読み捨てて頂ければ幸い。

火影室へようこそ(仮)6

2017.09.23 (Sat) 18:22 Category : 小話

書き途中で放置してた。ちょっと長かったかな。
カカシがイルカを寝室に連れ込みます。

*

 その日以降、イルカはあからさまにカカシを避けた。なるべく火影室にも入らなかった。カカシに用がある時は他の事務員やシカマルに頼んで、どうしても避けられない時は火影室へ行ったが、カカシの顔はまともに見れなかった。
 あんなキスをして、カカシの前でどんな顔をしてどう話せばいいのか、イルカは分からなかった。しかも避ければ避けるほど、顔を合わせづらくなる。
 仕事にならないという訳ではなかったが、それまで良好だった職場の雰囲気は確実に変わった。シカマルをはじめ、火影室を訪れた他の者も何となく気付いただろう。なにしろ周囲は察しのいい忍者ばかりだ。
 数日後、イルカはカカシに呼び出された。ここ数日カカシを避け続けている事を何か言われるのだと思った。
 イルカが憂鬱な気分で火影室へ行くと、明日からアカデミーへ戻るようにとカカシに言い渡された。
 イルカはショックで呆然とした。カカシに嫌われたと思ったのだ。
「アカデミーで毎年恒例のサバイバル演習があるそうです。監督者の人手が足りないので、明日からアカデミーへ手伝いに行ってください」
 カカシはイルカの方を見ずに、事務的に言った。
 イルカは数日カカシを避け続けていた事も忘れて、縋るようにカカシの事を見つめた。カカシは見向きもしない。
 イルカがカカシを避けたから、カカシを怒らせてしまったのだろう。カカシに嫌われてしまったのだ。
 だから理由をつけて厄介払いをされたのだと、イルカは思った。
「カカシさん、あの」
「イルカ先生も暫く俺の顔見たくないでしょ?」
「・・・!」
 イルカは思わず何か言いかけて、何も言わずに黙った。
「わ・・・かりました。・・・火影様」
 そう言った自分の声は震えていた。イルカは頭を下げてから火影室を出て行った。

 翌日から一週間、イルカはアカデミーに戻り、サバイバル演習に参加した。
 アカデミーの同僚達は、イルカが手伝いに来たのを喜んでくれた。人手が必要だから一時的にイルカをアカデミーに戻して欲しいと要望を出していたらしい。
 イルカは、自分を必要としてくれる場所がある事を嬉しく思った。
 数ヶ月ぶりのアカデミーの仕事は楽しかった。指導者ではなく演習の監督者として生徒達から隠れて見ているだけだったが、生徒たちの成長ぶりが見れて満足だった。
 演習七日目の昼過ぎにサバイバル演習は無事終了した。疲れ切った生徒たちを解散させ、後片付けをしてからアカデミーの教員らも解散となった。教員が演習場から戻りアカデミーで解散する頃には、既に夕方になろうとしていた。
 イルカがこれから火影室へ顔を出そうか悩んでいると、同い年の同僚が後ろから突っ込んで来てイルカと肩を組んだ。
「イルカぁー!また明日から行っちゃうのかぁ?」
 同僚がやたらと寂しそうに言う。イルカがアカデミーから抜けてから、そのしわ寄せが同僚の元へ行っているので色々大変らしい。
「まぁアカデミーより火影様の側で働いてる方がいいよな。自慢できるし!」
「別に自慢なんて・・・」
「自慢だろぉ?六代目に引き抜かれたんだから」
 同僚は嫉妬と皮肉を混ぜたように言った。
「・・・・・・」
「本当はアカデミーに居て欲しいけどさぁ、副校長、六代目から言われてるらしいぜ。絶対イルカを返してくれって」
「え・・・」
「向こうも忙しそうだもんなぁ」
 でもこっちも忙しいんだからな、と同僚は力説した。イルカが戻るか人を増やすかしろと言いたいらしい。
 イルカは、年内には戻るからと同僚を宥めた。火影就任直後の忙しさを乗り切れば、火影室の仕事は落ち着いて来る。元からイルカの執務補佐の仕事はそれまで、という話だった。その前にクビになるかも知れないが。
「とりあえず今日まではこっちの人間だよな!打ち上げやるから絶対参加しろよ」
「わかった。でもその前に六代目に報告して来るよ」
 また後でな、と言ってイルカは同僚と別れた。
 イルカはそのまま火影室へ向かった。
 緊張しながら火影室の扉を叩く。中からカカシの声が聞こえて、イルカは深く息を吸うと一息に扉を開けて中に入った。
 カカシはいつものように書斎机で書類を眺めていた。顔を上げて、イルカの顔を意外そうに見つめる。
「イルカ先生・・・。アカデミーの方は終わったの?」
「はい。演習は無事終わりました。・・・こちらは大丈夫でしたか?すぐ、溜まった仕事片付けます」
 イルカは書斎机から少し離れて立って、カカシを見つめた。
 一週間前はあんなに避けていたのに、今は表面上だけでも落ち着いてカカシを見ることができた。内心はまだ恥ずかしかった。
 交わった視線が、静かに絡まり合う。
「今日はもういいよ。疲れたでしょ?明日で大丈夫だから」
「・・・でも」
「こっちに戻って来てくれただけで嬉しい」
 カカシがぽつりと言った。
 聞こえなかった訳でもないのにイルカが黙っていると、カカシが苦笑交じりの声で言った。
「アカデミーに行ったまま帰って来てくれないかと思ってたから」
「そんなこと、あるわけ・・・」
「俺があんな事したから、イルカ先生ここに来るの嫌になっちゃったんじゃないかと思って」
 カカシがどこか熱っぽい視線をイルカに向けた。
 イルカは途端に真っ赤になった。カカシとのキスを鮮明に思い出して頭がいっぱいになる。
「あの、カカシさん・・・」
「・・・・・・」
 イルカは口を開いたものの言葉が出て来なくて、何も言わないまま口を閉じて笑みを作った。
「・・・なんでもないです。俺、隣で仕事してますね」
「・・・うん」
 イルカは火影室を出ると、熱くなっている顔を擦った。
 事務室になっている隣の部屋へ行くと事務員が二名働いていて、イルカの顔を見てパッと笑顔になった。何故か半泣きになっている。
「えっ、どうしたんだ?」
 イルカが驚いて訊ねると、事務員二人はイルカが不在の一週間がどれだけ大変だったか訴え出した。
「しかも六代目がずっと機嫌悪くて生きた心地しませんでした」
「わ、悪かったな。全然手伝えなくて・・・」
 イルカは引きつりそうになる顔を苦笑で隠した。カカシの機嫌が悪かったのは、恐らくイルカの所為だろう。今し方顔を合わせた時はそんな感じは全く無かったが。
「あと俺がやるから、二人とも帰っていいよ。もう定時だろ」
 事務員の二人は口では良いんですかと言っていたが、残った仕事をイルカに任せてすぐに帰って行った。
 イルカは暫く一人で仕事をした。隣の火影室にはカカシが居るはずだが、ずっと静かだった。
 大方仕事が片付くと、揃えた書類を持って火影室へ行った。イルカが火影室に顔を見せると、イルカは眉を顰めた。
「イルカ先生、まだ仕事してたの?」
「すみません。あの、これだけ目を通して戴けますか?急ぎの書類で」
 カカシは書類を寄越せと手を出し、イルカはカカシの手へ書類を差し出した。
 書類に目を向けながら、カカシが少し厳しい声で言った。
「早く帰らなきゃダメでしょ、イルカ先生」
「はい・・・すみません」
 イルカは苦笑いしながら答えた。
 家に帰らないのは理由があった。少しでもカカシの側に居たかったからだ。
 サバイバル演習の後にわざわざ火影室へ来たのも、別に報告が必要だったからじゃなくカカシに会いたかったからだった。
 イルカが書斎机の前に立ってカカシが火影の決済印を捺すのを待っていると、部屋の外で声が聞こえた。隣の事務室のようだった。イルカを探しているように聞こえる。
 イルカはカカシに断ってから火影室を出ると、アカデミーの同僚が事務室から出て来る所だった。
「ああ、イルカ!居た居た!打ち上げもうすぐ始まるから、お前も早く来いよ」
 サバイバル演習が無事終わったので、アカデミーの職員で打ち上げをする事になっていた。わざわざ呼びに来てくれたらしい。
「ああ、ありがとう。でも、行けたら行くよ」
 まだ仕事があるんだ、とイルカは言った。
「もー、早く終わらせて来いよ!」
 同僚はそう言ってさっさと行ってしまった。早く飲みに行きたいのだろう。
 イルカは火影室へ戻った。
 カカシは書類を横に置いてイルカが戻るのを待っていた。
「何だったの?」
「アカデミーの同僚でした。今日の打ち上げやるから呼びに来てくれて」
 イルカが事情を話すと、カカシは素っ気なく言った。
「じゃあ早く行きなよ。仕事これで終わりでしょ?」
「はい・・・。でも・・・」
 イルカはカカシの座っている書斎机に目を向けた。書類が山になっている。
「カカシさんは、まだ終わらないんですか?」
「俺のことはいいよ。イルカ先生が行かないと、俺が飲みにも行かせてくれない嫌な上司みたいじゃない」
 カカシは冗談めかして言った。
「・・・実は、あんまり行きたくなくて」
 イルカは、アカデミーの飲み会にあまり乗り気ではなかった。
 カカシはイルカの様子を見て首を傾げた。
「どうして?」
「きっと色々聞かれると思うので・・・カカシさんのこと」
「俺?」
 カカシは自分の名前が出て来たのが意外だったのか目を丸くした。
「昔から憧れてる人、多いんですよ。特にアカデミーの職員はあんまり任務にも出ないから、一緒に仕事する機会も少ないですし。まあ顔は合わせますけど、仲良くなる事はあんまりないですから」
 カカシの事をよく知らない者にとっては、六代目火影でもある彼は近寄りがたいものらしい。その上憧れがあるので、あれこれ知りたがる。
 そう考えると、イルカは特別だったのだろう。運が良かった。カカシとは教え子を通じて知り合えたし、火影と部下という関係でしかないが、今では仲も良い。
「俺、馬鹿正直だから聞かれたらきっと話してしまうし・・・折角俺しか知らない事もあるのに、あんまり人には教えたくないです」
 それは自分だけが知っていたいという独占欲のようなものだった。
 カカシはイルカを見つめて、不思議そうに目をぱちくりとさせた。そういう顔も、きっと側に居る者にしか見せない表情だろう。
 イルカは表情を緩めて微笑むと、カカシに言った。
「でも、やっぱり行きます。俺が行かないと、カカシさんが悪く言われちゃうかも知れないですし」
 お先に失礼します、とイルカが言いかけた時、カカシがイルカの手を掴んだ。
 書斎机の向こうに居たカカシが、いつの間にかイルカの横に居た。イルカは吃驚したが、特に体を退いたり逃げたりはしなかった。
「行かなくていいです」
「!」
 カカシはイルカの腰に腕を回した。体が触れ合う。
「行かないで。俺と居てください」
「カカシさ・・・」
 カカシがマスクを下ろし、唇を近づける。イルカは思わず目を閉じた。
 唇が重なる。カカシは唇を押しつけ、イルカの唇を抉じ開けて舌を入れた。
「っ・・・」
 イルカはされるがままカカシの唇と舌を受け入れた。カカシは夢中になってイルカに口づけている。
 イルカはカカシに押されて、書斎机に寄りかかった。そのまま机の上に押し倒されそうになる。
 イルカはカカシの肩を掴んで精一杯押し返した。力が入らなくて、互いの胸が少し離れただけだった。漸く唇が離れる。
「だ、だめです・・・カカシさん」
「イルカ先生・・・嫌?」
 カカシが悲しそうに問う。イルカはすぐに首を横に振った。言葉が上手く出て来ない。
「あの、その・・・ここでは、ちょっと・・・」
 イルカは目を左右に動かして辺りを窺った。カカシの向こうに見える扉は閉まっている。部屋にはカカシとイルカしか居ないが、いつ誰が来てもおかしくない。
「わかった、イルカ先生・・・。それなら、上の部屋に行こう?」
 火影室の真上は寝室だった。
 カカシはイルカを抱き寄せると、瞬身の術を使った。イルカはカカシのチャクラを感じたかと思うと、次の瞬間には違う部屋に居た。火影室ではない。イルカの後ろには書斎机は無く、大きなベッドがあった。
 カカシに押されて、イルカはベッドに倒れ込んだ。カカシがイルカの足から靴を取り上げて床に落とす。カカシはベッドに乗り上がると、イルカの上に覆い被さった。
「イルカ先生・・・」
 カカシがキスをしながらイルカの服を脱がせ、脱がせた所から愛撫してゆく。カカシの手に体中を触られてイルカは竦んだ。
「っ、カカシさん・・・」
 カカシがイルカの肩に顔を埋めて口づける。カカシはイルカを抱きしめ、顔を上げてイルカを見つめた。
「イルカ先生、本当にいいの?」
 カカシが訊ねながら、イルカの肌を撫でる。カカシの指先が冷たく感じるほど、イルカの体は熱くなっていた。
 イルカはどきどきしながらカカシの手の甲に自分の手を重ねた。
「はい・・・カカシさん」
 イルカが興奮を抑えながら返事をすると、カカシは嬉しそうに微笑みイルカの手を握った。互いの手の平を合わせて指を絡める。二人の熱が手の平で混ざり合う。
 カカシがイルカに口づけると、下の部屋から人の声が聞こえた。六代目火影を呼ぶ声だ。何かあったらしい。
 カカシは溜息を吐きながらイルカの上から退いた。
「ごめん、イルカ先生。行かないと・・・」
 イルカもベットの上で体を起こした。カカシはもうベッドを離れて身形を整えていた。
「緊急なら俺も・・・」
「いいよ。休んでて。召集かけなきゃいけなくなるようなら呼びに来る」
「・・・わかりました」
 イルカはベットの上からカカシの姿を目で追った。立ち上がろうにも腰が抜けていたのだ。
 カカシは部屋を出る前にイルカの側に来て頬にキスをした。
「何も無かったら帰ってもいいですから」
「・・・ここに居ていいなら、待ってます」
「!」
 カカシがじっと見つめる。カカシが何も言わないのでイルカは不安になって、「ダメなら帰ります」と言った。
 カカシは何も言わないままイルカの唇にゆっくり口づけた。舌が触れて、少しだけ戯れてから、唇を離した。
「いってきます。イルカ先生」
「・・・いってらっしゃい。カカシさん」
 カカシは名残惜しそうに見つめていたが、もう一度キスをして姿を消した。
 残されたイルカは、そのまま体を後ろに倒してベッドに横になり、ふとんに包まった。ベッドは微かにカカシの匂いがした。
 イルカはカカシがしてくれた事を思い出して一人で悶えた。たくさんキスをしてしまった。
 下の階からはカカシの声が聞こえ、バタバタとした人の気配がしていた。
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日記です。
節操なく色々好きです。で、飽きっぽい。
二次小説で腐った妄想たれ流してます。なんていうか、ごめんなさい。
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