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日記です。 読み捨てて頂ければ幸い。

しはす

2018.03.25 (Sun) 18:55 Category : 小話

年末に書いたのが出て来たので。お疲れの皆様へ。
多分書いた時疲れてた。(笑)

*

 十二月も半分ほど過ぎたある夜、火影室の上の階にある部屋をイルカが訪ねて来た。
 月が変わる前から、カカシは殆ど家に帰らずにこの部屋で寝泊まりしていた。家に帰る時間も惜しいほど忙しかったのだ。
 家に帰っても寝るだけで、恋人のイルカとイチャイチャする時間も無い。それなら家に帰らずに独り寝でも同じ事だった。
 ーーと言うより、疲れた顔でイルカに会いたくなかったのだ。イルカに対して冷たく接してしまいそうで嫌だった。
 なのに、イルカは会いに来た。それも特に忙しかった日の夜に。
 ドアを開けイルカの姿を目にしたカカシは、いつもなら喜ぶところだが、この時は笑いもせずに『ああ、どうしよう』と思った。疲れて顔が動かない。
「こんばんは。お疲れさまです」
 イルカはにこやかだった。
 カカシはイルカを部屋に招き入れて、とりあえずハグをした。
 体を寄せ合いながら疲れた頭で必死に考える。マスクをしたままなら笑顔が作れなくてもバレないかも。イルカに嫌な思いはさせたくないし、嫌われたくもない。
 ところが、イルカにはすぐにバレてしまった。
「カカシさん、疲れてるでしょ?」
「!」
 イルカはカカシのマスクを勝手に引き下げて、カカシの頬に手を当てた。温かい手がカカシの頬を包む。
「いつもご苦労さまです」
「イルカ先生・・・」
「急に来てごめんなさい。すぐ帰りますから。これだけ渡したくて」
 イルカは大きな紙袋を抱えていた。それを目の前に持ち上げる。
「これ、まだ早いですがクリスマスプレゼントです」
 イルカはにっこり笑って紙袋ごとカカシに渡した。
 紙袋は思っていたより軽かった。中を覗くと黒い布製の物が入っている。
「クッション?」
 カカシは紙袋からそれを掴んで取り出した。手触りのいい生地で、柔らかくてふわふわしている。
 その黒く丸っこいクッションには、三角の耳と短い尻尾が付いていた。よく見ると顔も付いている。落書きのような気の抜けた表情の・・・犬のぬいぐるみクッションのようだった。
 気の抜けた表情と同じく、クッションにしては中綿が頼りないのか、くったりしている。
 カカシは反応に困った。
「なんです、この・・・いぬ?」
「クッションです。手触りがいいでしょ?伸びるんですよ」
 イルカはカカシの持っているクッションを両手で掴んで左右に引っ張った。生地が伸びて、ぬいぐるみの顔が更に気の抜けた表情になる。
「・・・・・・」
 カカシが黙っていると、呆れたと思ったのかイルカは苦笑した。
「カカシさん、最近忙しいでしょう?疲れてるみたいだし・・・。年末はこれからもっと忙しくなるから、癒しが必要なんじゃないかと思って」
 イルカはそう言うと、ぬいぐるみクッションをカカシの顔に押しつけた。
「むふっ」
 カカシの顔を柔らかい布地が覆う。カカシは息をつくとクッションを抱きかかえた。
 目の前のイルカはにこにこしていた。
「気持ちいいでしょう?いい感じに気が抜けてリラックスできません?」
「うん」
「ふふ。よかった」
 イルカが満足げに笑う。カカシも自然と笑みがこぼれた。
「うちにも同じのあるんですよ、それ。誕生日にナルトに貰って」
「この間家に行った時はこんなの無かったよ?」
「この間は・・・恥ずかしいから隠してました。こんなの使ってたら笑われると思って」
 イルカはぬいぐるみクッションの顔を摘んで苦笑した。
「でも使い心地いいから、カカシさんも使ってください」
「ありがとう、イルカ先生・・・。でもイルカ先生の家、ナルトが持ってきたとか生徒に貰ったとかで、可愛い物が結構あるからね?こんなん一つ隠したって無駄ですよ」
「え!?そ、そうですか!?」
 イルカが赤くなる。
「そうだよ。コップとか、タオルとか」
 他にも可愛くて便利な生活グッズが置いてある。カカシが言うとイルカはショックを受けていた。全く気にしてなかったらしい。
 カカシは笑うのを堪えて苦笑した。
「でもこういうのが部屋にあると、イルカ先生の家に居るみたいでいいかも」
「ほんとですか?じゃあウチにある物、少し持って来ましょうか?」
「え。うん。・・・使える物にしてね」
 カカシは自分の発言に少し後悔しながら言った。イルカは嬉しそうにしている。
 イルカはカカシの抱えているクッションに寄りかかった。犬でも撫でるように、ぬいぐるみクッションを触る。
「へへ、お揃いですね。今度またお揃いの物持って来ますね」
「・・・・・・」
 カカシは表情を緩めると、イルカを引き寄せて唇を重ねた。
「ありがとう、イルカ先生」
 カカシは改めて礼を言った。イルカを抱きしめる。
 イルカはくすぐったそうに笑った。
「俺からのクリスマスプレゼントも『お揃い』がいいですかね?」
 カカシはそう言って、イルカの左手を取り、指を絡めて握った。その手を口元へ引き寄せて、薬指の付け根に口づける。
 イルカは赤くなっていた。
「お、俺にはそんな、勿体無いです!」
「そんな事ないよ。俺からの指輪じゃ嫌?」
「そ、そういう訳じゃ・・・!」
 イルカはしどろもどろになっている。
「指に嵌めてくれなくてもいいから、お揃いのを持ってたいな」
「カカシさん・・・。はい」
 イルカは照れた表情で笑った。それからカカシの手を握り返し、前のめりになってカカシに迫った。
「あの、でも、カカシさんのは俺から贈らせてください!」
「うん。ふふ。そうだね。そうしよう」
「はい」
 カカシはイルカを抱き寄せると、もう一度口づけた。舌を絡めて求め合う。
 唇が離れるとイルカはカカシを見つめた。
「は・・・カカシさん、疲れてたんじゃ?」
「イルカ先生のお陰で元気出たよ」
 カカシはイルカの腰を抱き寄せて笑った。イルカが顔を赤くして睨みつける。
「もう・・・」
「イルカ先生が一番の癒しですよ」
 カカシが抱きしめると、イルカは笑いながらカカシにキスをした。
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