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n - caramelizing

日記です。 読み捨てて頂ければ幸い。

かわいいから没収します!

2019.11.04 (Mon) 23:00 Category : 小話

ちみメガバディ発売決定おめでとう記念に書きました。後でサイトに移動します。





 イルカが任務受付所から火影室へ書類を持って行くと、六代目火影は書斎机に頬杖をついてじっと机の上を見ていた。
 会議の資料でも読み込んでいるのかと思えば、机の上には何も広げられていない。機嫌が良さそうに見えるが愛読書を眺めている訳でもない。
 イルカが火影室に足を踏み入れても火影は気づいていなさそうだった。いや、扉の前でノックをして返事を聞いてから入室したから、六代目火影はちゃんと気付いているはずだ。でもイルカの方を見ようとはしなかった。
「……お疲れ様です。本日の依頼一覧を持って来ました」
「ああ。ありがとう、イルカ先生」
 カカシはそこで漸く顔を上げて、イルカを見つめて目を細めた。本当に機嫌が良さそうだ。
「何を見ていたんですか?」
 イルカは書斎机の上に書類を置いてからカカシに訊ねた。イルカの位置からでは机に積み上がっていた書類の山の陰になって、カカシが何を見ていたのか分からなかった。
 さては隠れていかがわしい本でも見ていたかと思ったが、カカシは「これです」と言ってイルカの前にそれを出して見せた。
「えっ?」
 イルカは予想外の物を目にして少し驚いた。目の前に出されたのは、オモチャの人形だった。フィギュアと言うのだろうか。手の平に隠れてしまうくらいの小さな人形で、体に対して頭が大きかった。人形は二体あって、一つは薄灰色の髪で顔の鼻から下が隠れていて、もう一つは焦茶色の髪で……。なんだか二つとも見たことのある特徴があった。
「なんですか、この人形? なんだかとても……」
 とても自分達に似ている、とイルカは思った。でも思い過ごしかも知れないし、ハッキリとは言えなかった。
 カカシはニコニコ笑っていた。
「かわいいでしょ? 俺たちをモデルに作ってもらったんですよ」
「俺……たち?」
 イルカは聞き間違いかと思って、カカシの言葉を聞こえたままに口にした。カカシはニコニコしながら人差し指を出して、自分とイルカを順番に指差した。
「そ。俺、たち」
「……」
 イルカはカカシを見つめ、それから人形に視線を向けた。
「……はあ?」
 イルカは思いっきり顔を顰めた。何言ってんだこの人、今度はこういう趣味に目覚めたのか、と呆れながらカカシに目を向ける。カカシはイルカが何を思ったのか見抜いたのか、ちがいますと言って両手をひらひらさせた。
「この間、こういう人形を作っている会社の社長さんから依頼があってね……。お礼に人形作ってくれるって言うもんだから、俺とイルカ先生の写真渡したんですよ。そしたらこれ送って来て。写真からデフォルメして人形にするサービスらしいです」
 カカシが説明してくれた。別に新しい趣味じゃないですよ、と付け加える。
「でもよくできてるでしょ? ちいさくてかわいいし」
 カカシはそう言って人形の頭を突ついた。
 イルカは薄灰色の髪の人形を手に取って、目の前のカカシと見比べた。特徴はよく捉えられている。つまり似ている。もう一つの方は、似ているかの判断はつかなかった。どちらもかわいかった。
「随分かわいく作ってくれたものですね」
 じっくり見てみるとあんまり似ているものだから、イルカは思わず微笑んでしまった。本当にかわいらしい。それも二人揃えて作ってくれたのがまた可愛らしかった。
「ふふ。かわいい」
 カカシはイルカの笑顔を見て笑った。
「でしょ? だからこうして並べて見てたんですよ」
 カカシは人形を元の位置に戻して並べた。火影室に入って来た者が書斎机の前に立つと、机の上の本立てやらペン立てに隠れてちょうど見えない位置だった。イルカも覗き込まないと見えなった。
「ふふ。イルカ先生がかわいくて癒されます」
 カカシが人形を眺めて、にやけるように言った。マスクの下では実際ににやけているだろう。
 イルカはそれを見て、カカシの視線の先に手を伸ばした。小さな人形を取り上げる。
「こんなの、ここに並べられてたら困ります! 仕事に関係ないものは没収!」
 デフォルメされていても誰だか分かってしまう人形を、仲良く並べられるのは恥ずかしかった。人に見られるかも知れない。
「えー!」
 カカシは不満を声に出したが、予想はしていたのか特に食い下がったりしなかった。あっさり諦めて、机の引き出しを開ける。
「じゃあ代わりにこれ飾る……」
 カカシが机の上に出したのは写真立てだった。イルカの写真が入っている。いつ撮ったのか不明の、かなり高度な隠し撮り写真だった。
「ちょっと! なんですかこれ!? 余計ダメです!!」
 イルカはぎょっとして写真立てごと取り上げた。カカシが悲しそうな声を上げた。
「没収!」
「そんなあ。いつもそれ見て仕事頑張ってたんですよ。酷いです」
 流石にカカシは苦情を申し立てた。そう言われてしまうと取り上げにくくなるが、イルカはダメと言った。やっぱり人に見られてしまっては困る。
「俺はこれからどうやって仕事を頑張れば……」
 カカシが肩を落として嘆いた。仕方のない人だ。イルカは書斎机に手をついた。
「まったく……あんたの側には本物が居るんだから、呼んでくれればいいでしょう? 写真や人形よりやる気出るんじゃないんですか?」
 カカシは顔を上げて目を丸くした。その目が細められたかと思うと、イルカの襟を引き寄せ首を抱きしめる。
「わっ、カカシさん!」
「ふふ。うれしい。流石、俺のイルカ先生」
「……」
 イルカは、もしかして嵌められたかなあと思いながら、カカシの頬に口づけた。マスクの上から口元にもキスをする。カカシは満足そうに、へにゃっと目元の表情を崩した。
「やる気出ました?」
「うん」
「じゃあコレは持ってっちゃいますよ」
 カカシは少し残念そうに頷いた。イルカは小さな人形と写真立てを持って、火影室を出て行こうとした。
「イルカ先生。今夜行きますね」
 カカシがイルカを呼び止めて言った。カカシは忙しくて、今はイルカの家には殆ど来ない。だからカカシの宣言は嬉しくて、イルカは自然と満面の笑みを浮かべた。
「待ってます、カカシさん」
 イルカはカカシに向かって小さく手を振ってから、火影室を後にした。
 火影室を出てからイルカは没収した物を見つめ、カカシの表情を思い出して、思わずにやにや笑ってしまった。カカシも仕方のない人だが、自分も大概だと思った。



 その夜カカシがイルカの家へ行くと、イルカの部屋には昼間没収された人形が飾ってあった。仲良く並べられている。その後ろには、壁掛けカレンダーの風景写真を切り抜いて屏風のように立ててあった。完璧に人形の背景になっている。
「イルカ先生、これ……」
 カカシはしっかり飾られている人形を、やや呆れながら眺めた。人形はイルカに可愛がられているようだ。
「あ、どうですか? なかなか良くないですか?」
 イルカが嬉しそうに話す。
「良いと思いますけど……気に入ったんならそう言ってくれればいいのに」
「別に欲しくて没収した訳じゃないですよ」
 心外だとばかりにイルカは言った。
「ま、そういう事にしておきます」
 カカシはイルカを側に呼んで抱き寄せた。仲良く顔を寄せ合う。
「俺はどちらかと言うとカカシさんの隠し撮り写真の方が欲しいです」
 イルカが欲しかったのはそっちらしい。残念だけど用意は無い。
「えー? 本物が居るんだからいいでしょ?」
 カカシが茶目っ気を込めてそう言うと、イルカは可笑しそうに笑った。「そうですね」と答えて唇を近づける。
 お互い笑みを湛えながら、唇を重ね合わせた。
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