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n - caramelizing

日記です。 読み捨てて頂ければ幸い。

SS

2020.09.16 (Wed) 11:34 Category : 小話

名もなき短編

間に合わなかったけど、誕生日おめでとうね。カカシ先生。ついったーでトレンド入ってて嬉しかった。みんな大好きなんですね。

*
「イルカ先生。今日行ってもいい? 朝まで一緒にいたい」

 カカシにそう言われ、イルカは少し驚いて「えっ?」と小さな声をこぼした。カカシにそんなふうに誘われたのは初めてだった。カカシはいつも好きな時に押し掛けて来て、好きにイルカを抱いて泊まってゆく。イルカも別に拒まなかった。いちいち聞かれた事なんて無い。
 イルカも忍者の端くれ、相手の様子でなんとなく察した。きっとカカシは明日それなりの任務へ行く。でも、危険な任務なんですか、とは訊けなかった。
「……明日、早いんですか?」
「んー。うん。先に出る」
 何時とはカカシは言わなかった。やっぱり任務なんだろう。イルカはそれ以上は何も訊かずに、いいですよ、と答えた。
 カカシがマスクの下でほっとしたような表情をした——ように思えた。実際にはマスクで隠れて見えなかった。でも、そんな気がしたのだ。
 その日はイルカの家でカカシと夕食を摂った。特別なものは作らなかった。変わり映えのしないいつものメニュー。カカシも何度か食べたことがある。不味くはないと思うが、カカシは出されたものを黙って全部食べていた。
 片付けはカカシも手伝ってくれて、そのあと少しゆっくりしてから風呂に入り、普段より少し早い時間にベッドに入った。
 したことと言えばいつもと同じだったが、カカシはいつもよりやさしかったように思う。イルカも、この行為がいつもより特別に思えた。
 いつもよりずっと時間をかけて、焦れったくなるほどゆっくり、いつまでも抱き合った。二人だけの行為に時間をかけるだけ、睡眠時間が減ってゆく。でもカカシは気にしていないようだったし、イルカも何も言わなかった。カカシといつまでも体を繋げていたかった。

*

「帰って来たら、またウチに来てくれますか?」
 愛おしく、罪悪感の残る行為の後で、イルカがそう口にした。カカシは驚いて、ほんの一瞬息を呑んだ。そんなことを言われたのは初めてだった。
 イルカとは、出会ってからほどなくして今の関係になった。イルカを酔わせて関係を持ち、それからずっと続いている。多分イルカはイルカで、カカシが酔っ払って手を出したと思っている。
 イルカは最初の時から今まで厭とは言わなかった。カカシは拒まれないことを良いように解釈して、以来ずっとイルカの家に入り浸っていた。
 好きだとは言ってないし、イルカがどういうつもりかも聞いたことはない。イルカから誘われたことは一度だってない。どうしたい、どうしてほしいと言われたこともない。いつもカカシが勝手に同意を取り付けたつもりになってイルカと一晩を過ごしていた。
 だから、また来てほしいと言われた時は嬉しかった。その前の気持ちよくて空しいだけの行為がとても素敵で幸せなものに思えた。カカシは、もちろん必ずと約束をして、イルカと肌を寄せ合って眠りについた。
 でも、たった数時間寝て起きたら、その前の約束は夢だったんじゃないかと思えた。それでもイルカを抱いた記憶は確かにある。満たされたあの胸の感じも覚えている。全部、何もかも、夢だったんだろうか。
 カカシは枕に頬をつけて眠っているイルカの寝顔を暫く眺めてから、何故か切なくなって逃げるようにベッドを抜け出した。そっと起きたつもりだったが、すぐ隣で寝ていたイルカが気づいて身動ぎした。
「……カカシさん? もう行くんですか?」
 イルカが寝起きの声で訊ねる。こんな声、自分しか聞けないのだと思うと無性に愛おしかった。イルカはのそのそと体を起こした。
「起こしてゴメン。準備したら勝手に行くから」
「時間あるなら何か作りましょうか?」
「いや……」
 食べている時間は無い。カカシは断り掛けて、すぐに思い直した。
「ご飯残ってたらおにぎり作ってくれる?」
「はい」
 イルカはすぐにベッドを出て台所へ向かった。カカシが着替えを済ませて少ない荷物を再度確認している間に、イルカは台所から戻って来てお弁当の包みを手渡した。
「どうぞ」
「……ありがとう」
 イルカは一瞬むず痒そうな表情を見せた。カカシが荷物を持って玄関へ向かうと、イルカも後をついて来る。
「お気をつけて」
「……」
 あの約束について、カカシはもう一度確認したかったが言い出せないでいた。イルカも何も言ってくれない。やっぱり夢だったのだろうか。
「じゃあ」
 カカシがそれだけ言って行こうとすると、イルカは裸足のまま玄関の土間に下りて、カカシの手を掴んだ。距離を詰めたイルカがカカシに顔を寄せる。マスク越しに唇が触れた。
「いってらっしゃい。カカシさん」
 待ってますね、とイルカは小さな声で呟いて、カカシを玄関から押し出した。
「いってきます……」
 ぼんやりしていたカカシがやっとそう口にした時には、イルカの家の玄関扉が閉まるところだった。でも、扉が閉まる前のイルカの顔ははっきりと見えていた。照れくさそうな顔をしていた。
 カカシは今すぐ玄関の扉を開けてイルカを抱きしめたかったが、腕時計を確認してすぐに任務へ出発した。
(帰って来たら、好きだって言おう)
 イルカはイルカの家から離れながら、任務が終わった時のことを考えていた。
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