n - caramelizing
日記です。
読み捨てて頂ければ幸い。
休館日のナックルスタジアムにて
2021.01.12 (Tue) 12:56 | Category : 小話
耐えられなくて書きました。
マサルくんに語って貰ってますが、ほぼ私の、ホップへの想いです。笑
マサルくんに語って貰ってますが、ほぼ私の、ホップへの想いです。笑
*
昔から、幼馴染みのあいつのことが羨ましかった。ぼくの持っていないものを何でも持っていた。
自慢のお兄さんはもちろんのこと、出会った頃にはもう自分のポケモンを持っていたし、家には小さなバトルコートがあって、ポケモンのことも何でも知っていた。
夢中になるとすぐ突っ走って行っちゃうけど、なんにも物怖じしなくて、いつも目をキラキラさせていて、ぼくとは違うそういうところも羨ましかった。
負けん気が強くて、絶対あきらめない。ジムチャレンジの時に悩んで努力していたのは、ぼくが一番よく知ってる。目標を失ってしまった時だって折れなかった。
尊敬してる。
それに感謝もしてる。
ぼくをここまで連れて来てくれたのは間違いなくあいつだから。ぼく一人では絶対に来れなかった。ぼくにもチャンピオンやジムリーダーへの憧れはあったけど、それだけでは成し得なかった。
あいつはぼくの才能と努力のおかげだと言ってくれたけど、ぼくはただ、いつだって先を走っていた幼馴染みの背中を、見失わないように追い駆けていただけだった。
あいつにとって兄でありチャンピオンであったダンデがそうだったように、ぼくにとってはあいつが、行き先を照らしてくれる、ぼくの道しるべだった。
だから、ぼくの勝利によってダンデがチャンピオンの座を去り、あいつが目標を失った時、それまであったぼくの道しるべも消えてしまった。
明るく振舞ってはいたけど、あいつがどんな思いでいるのか考えるだけでぼくはつらかった。負い目さえ感じた。あいつの夢や希望や憧れを一気に奪ってしまったのはぼくなのだから。
あいつが自分の進む道を決めた時、晴れ晴れとした幼馴染みの顔を見てぼくは嬉しかった。そして同時に寂しくもなった。もうぼくたちは同じ道には居ない。目指す先も違う。あいつはぼくを置いて、ぼくの行けない道の先へと走り出してしまった。
また少し羨ましいと思った。
でも、だからこそ、ぼくはチャンピオンとしての責務を果たそうと思うようになった。違う道を選んだあいつに笑われないように、恥ずかしくないように……。この道で良かったんだと思えるように。
自分の道を進む格好いい幼馴染みの隣に、胸を張って立てるように。
*
「……って、思っているんですけど、なかなかうまくいかなくて。ホップもあれからどんどん強くなってるし」
隣に座っていたキバナは、ひと通り話を聞くと「ふ〜ん」と声を出した。目と口が物言いたげにニヤニヤ笑っている。
ナックルスタジアムのコートサイドだった。休館日で他に人は居ない。二人はコートサイドのベンチに並んで座っていた。
「いいねえ。青春してるねえ。まさかオレさま、そんなのろけ話聞かされるとは思わなかったぜ」
キバナのスマホロトムが、どこか使命感に燃えた顔をマサルへ向けた。スマホのカメラで狙っているらしい。
マサルは思わず赤くなった。
「そ、そんな話、してませんっ」
「あっはっは! ジョーダンだよ! そう真面目過ぎるのも良くないんじゃねーの? まったく、チャンピオンも大変だな」
キバナは子供のような顔で笑い飛ばした後で、マサルが一瞬ドキリとするほどのとても優しい目を見せた。
「そういう悩みは経験者に聞いてみたらいいと思うぜ」
キバナは「ほら」と言ってマサルの向こうに目を遣った。つられるようにしてキバナの視線の先へ首を向けると、そこには元チャンピオンのダンデと、その弟ホップが目を見開いて立っていた。兄弟らしく二人ともそっくりな顔だったが、ホップだけ顔が真っ赤だった。
マサルは話を聞かれていたと思って、一気に顔が熱くなった。今ならかえんほうしゃもできる気がする。
「き、きいてたの? いつから?」
「……オレのウールーが羨ましかったってあたり」
つまり、話はほぼすべて聞かれていたらしい。マサルは恥ずかしくなって両手で顔を覆った。
「つーか、そんなこと気にしてたのかよ! オレがチャンピオンを諦めたのはおまえのせいじゃねーし! オレはおまえがチャンピオンになったことだって嬉しいんだからな! オレはいつかおまえにも勝つし、兄貴にも勝つし、そんで博士にもなるんだぞ!」
ホップは真っ赤な顔で、明るい色の目を輝かせながら力強く言った。
マサルは、そんなまっすぐで強い幼馴染みをまた羨ましく思った。
次の瞬間、観客のいないナックルスタジアムに、ダンデのよく通る大声が響き渡った。
「マサル!!」
「ぎゃっ! は、はひっ!」
マサルはすぐ近くから大声で呼ばれて驚き、ベンチから飛び上がった。反射的に姿勢を正して直立する。
ダンデはマサルに詰め寄ると、マサルの両手を掴んで胸の前で握った。
「ありがとう! キミのおかげだ! オレではホップに次の道を示してやれなかった。キミが居たから、ホップは新しい道を見つけたんだ!」
「えっ、いや、あの……」
「これからも弟をよろしく頼む!」
ダンデは弟よりもキラキラした強い目で見つめてくる。マサルはそのエネルギーを受け止めきれずに、目を回しそうになった。
「は……はいっ!」
マサルは元チャンピオンに迫られてそう答えるのが精いっぱいだった。
ダンデの手が離れると、マサルはふらふらしてベンチに尻餅を突いた。背もたれのないベンチシートの後ろにそのまま倒れそうになり、キバナが咄嗟に支えてくれる。
「おい、大丈夫か? あんまりおどかしてやるなよ、ダンデ」
「そんなつもりは無かったんだが」
「おーい! 大丈夫か、マサル?」
ホップが顔を覗き込んでくる。マサルはキバナの肩を借りて、自分の体を支えた。
「だ、だいじょうぶ……」
マサルは少しくらくらしながらもそう答えた。
マイペースな元チャンピオンは、既にマサルから離れてスタジアムのバトルコートを眺めていた。
「なあ、キバナ! バトルしようぜ!」
「はあ? スタジアムはこれから整備が入るんだよ」
バトルコートは昨日の激しい試合でボコボコに荒れていた。今日はその整備の為もあり、ナックルスタジアムは休館になっている。
とは言え、バトルコートはダンデとキバナの公式試合の後よりは綺麗なものだった。二人のバトルの後は、天変地異でも起こったかの如くバトルコートは破壊されるのが常だった。
「だからそれまでならいくら暴れても平気だろう」
こちらを向いたダンデの目が輝く。
「困ったオーナー様だな。ダイマックスは無しだぞ」
二人は言い合いながらバトルコートの真ん中へと向かった。
「ホップ! 一緒に組もう!」
「マサル! おまえはオレさまとだ!」
突然指名を受けたマサルとホップは、ぽかんとして顔を見合わせた。ボディバッグの中で、カタカタとボールが揺れる音がする。
「勝負しようぜ、マサル!」
ベンチから動こうとしないマサルの手をホップが引っ張る。マサルは手を引っ張られて立ち上がった勢いのまま、ホップの後を追って広いスタジアムの真ん中へと向かった。
*
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二次小説で腐った妄想たれ流してます。なんていうか、ごめんなさい。
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