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日記です。 読み捨てて頂ければ幸い。

ナックルユニバーシティへ

2021.02.07 (Sun) 21:54 Category : 小話

ホップがナックルユニバーシティへお遣いに行ったらキバナさんに遭う話。(私が楽しいだけ)

*

「ホップー! ちょっと頼みがあるんだけど」
 ホップがソニアの助手を始めてからひと月が経った頃、資料集めやフィールドワークの付き添いが多かったホップにソニアがお遣いを頼んだ。
「今日ナックルユニバーシティまで行って、これ届けて来てくれない?」
 そう言ってソニアは、緩衝材のプチプチで幾重にもパッケージされたモノを差し出した。
「この間まどろみの森で取ったサンプル。ウチの設備だけだとちょっと不安だから、ナックルユニバーシティでも解析お願いしたの」
 マグノリア博士の知り合いの研究室だそうで、研究サンプルを融通したり共同で調査したりと何かと関わりがあるらしい。
 もちろんホップに断る選択肢もなく、大事なお遣いを任されることとなった。
「ついでだからナックルユニバーシティの図書館行ってきなよ。すっごい大きくて、ここにもない貴重な本が山ほどあるから」
「へー! じゃあこれ届けたら行ってみようかな!」
 ホップは早速準備をしてポケモン研究所を出発した。
 ナックルユニバーシティはその名の通りナックルシティにある伝統ある名門大学だった。シュートシティが出来てからナックルシティはガラル最大の都市の名と経済の中心をシュートシティに譲り渡したが、ナックルユニバーシティは今でもガラルの知識の中心だった。
 ホップはナックルシティ駅に到着すると、駅構内にあったマップを確認してからナックルスタジアムの裏手へと向かった。
「こっちの方はあんまり来たことないなあ……」
 城壁に囲まれた通りを進んで行き、アーチ形の門を通り抜ける。急に目の前が開け、若い人が多く行き交っていた。今通り抜けた大きな門がナックルユニバーシティの入口だったらしい。
 ホップは周囲を見渡すと、門の裏にある衛兵の詰所のようなやや厳つい守衛室へと足を向けた。そこで手続きをして入構証を貰い、それを首から提げて意気揚々とユニバーシティの内部へと向かった。
 構内の建物は街の城壁と同じくすべて黒っぽい石造りだった。ナックルシティの大学だけあって、建物のファサードや敷地を囲む城壁の上にドラゴンを象った装飾が目につく。
 ホップは守衛室で貰ったパンフレットを見ながら目的の研究室へと向かった。
 ソニアに頼まれたお遣いはすぐに終わった。研究室は忙しそうで、部屋には気になる物もたくさんあったが、ホップは用事を済ませると挨拶だけして研究室を後にした。
 お遣いを済ませたホップは、探検気分で構内を歩いた。石造りの大きな校舎は内部が入り組んでいて、下りる階段を間違えるとすぐに迷いそうになる。
「アニキが来たら真っ先に迷うな」
 ホップはひと先ず建物を出ると、石造りの重厚なファサードの下でパンフレットを広げた。構内の見取り図を見る。
「図書館ってどこだ? ソニアのやつ、カフェテリアもオススメって言ってたな」
 パンフレットを目の前に広げていると、建物前の広場が騒がしくなった。ホップが顔の前からパンフレットを下ろすと、広場に不思議な人だかりが出来ている。その人だかりの中心には、周囲より一際背の高い男が立っていた。それを囲んでいるのは女の人ばかりのようだ。
 人だかりの中心人物が知っている人だったため、ホップは驚いて口をぽかんと開けた。ナックルシティに来れば会えるかもとは思っていたが、ここで遭えるとは思っていなかったのだ。
 向こうが離れて立っていたホップに気づき、人だかりの真ん中で長い手を挙げた。
「おーい! ホップ!」
 集まっていた人の視線が一斉にホップに向く。ホップは思わず「ひぇっ」と声を出した。
 人だかりを解散させて歩いて来るのは、ナックルシティのドラゴンジムでジムリーダーを務めるキバナだった。
「こんな所で会うなんて奇遇だな! あの博士のねーちゃんのお遣いか?」
「うん。そんなとこ。それよりキバナさん! もしかしてナックルユニバーシティの学生なのか!?」
 ホップは驚きと尊敬を込めてキバナを見上げた。トップジムリーダーでありながら名門大学に通うなんて、ポケモン博士を目指すホップにとっては未来の自分を見るような憧れの存在に思えた。
「え? 違う違う! オレさま、月イチで特別講義してんの。生徒じゃなくて講師」
 キバナはそう言って笑ってみせた。
「えっ!?」
 講師と聞いてホップは余計に驚いた。
「講師ってキバナさんが!? すーげえー! なにそれ! 超かっけー!」
「はは! いーねえ、その尊敬の眼差し! でも別に大したことじゃなくて、講義内容は一般教養から中級トレーナー向けの内容だよ。ワイルドエリアの話とか、初歩的な育成論とかな」
「へえー! いいなー、おもしろそう!」
 ホップの大袈裟なリアクションを、キバナが楽しそうに見ている。
「時間あるならオレさまの講義聞いてくか?」
「えっ!? いいの!?」
「いいぜ。あとで写真撮らせてくれな~。今日のスペシャルゲストってことでSNSに載せるから!」
 キバナに連れていかれたのは、階段状になっている広い講義室だった。200人は入りそうな大きな部屋で、席は殆ど埋まっている。受講生はやはり女子学生の方が多かった。
 キバナはホップを最前列の席に座らせた。不思議なことに最前列は全て空席だった。座ればいいのに一番後ろで立っている人も居る。ホップがそれについて質問するとキバナはなんとも言えない表情で苦笑した。
「あー、それはな。ファンが喧嘩するから暗黙の了解みたいだな」
 講義が始まるまでまだ少し時間があるようで、キバナはホップの隣の席に座った。キバナが背中を向けた途端に、後方の席からキャッキャッと囁き合う女の人の声が多く聞こえ始めた。キバナのことを話しているようだ。
 ホップがキバナさん人気だな~と思っていると、後方の席の声が耳に入って来た。
「ねえ! あの子、この前のトーナメントに出てた子じゃない?」
「ホントだ! ホップ選手!」
「ダンデさんの弟なんでしょ? そっくり~かわいい~!」
「私、セミファイナルのバトル見てからファンなんだよね! あとでサイン貰っちゃおうかな」
 後ろの方の席からきゃあきゃあ言う声が聞こえる。ホップは振り返る訳にもいかなくなり、席で小さくなって固まった。隣に座っているキバナが机に肘をついてホップの顔を覗き込む。
「おねーさんたちに人気じゃん。ホップきゅん」
「か、からかうなよ、キバナさんっ」
「ファンは大事にした方がいいぜ? ほら、ニコッて笑って手振ってみな」
 キバナはホップの肩を掴んで強引に後ろを振り向かせた。講義室の中段辺りに座っていた、ホップのことを話していたと思しき学生グループと目が合う。
「ほらほら、えがお~。にこ~って」
 キバナがホップの手首を掴んで持ち上げる。
「に、にこー?」
「うまくできたら、あとでオレさまがバトルの相手してやるよ」
 キバナがホップの耳元でこっそり囁いた。
「えっ! ホント!?」
 ホップはパッと笑顔になると、満面の笑みで後方の席に向かって手を振った。そのファンサービスをもろに食らった学生グループは照れて一瞬静かになり、その周囲に居た女子学生もファンサの流れ弾に当たって赤くなっていた。
「キャー! かわいい!!」
「やだあ! ダンデと同じ顔であの笑顔はズルイ!」
「あとで絶対いっしょに写真撮ってもらうー!」
 俄かに講義室が騒がしくなる。ホップのファンサを目撃した者は多く、そのほとんどがホップの笑顔にやられていた。
 隣に居たキバナは、声こそ抑えていたが涙が浮くほど笑っていた。
「ぶっ……ふふっ……おまえら兄弟、メロメロ使えんのかよ」
「キバナさんがやれって言ったんじゃん!」
 ホップが真っ赤になって抗議すると、キバナは笑いながら謝った。
「いや、わるいわるい。バトルにつられるのも兄貴そっくりだな」
「……!」
 キバナはホップの頭に手を置くと、席を立って講義室の前へ行き壇上に立った。外からチャイムの音が聞こえる。
 キバナはいつの間にか小さなマイクを襟元に着けていた。壇上に立ったキバナは講義室を見渡した。
「さて。時間になったから講義を始めよう。今日は特別なゲストが居るからオレさまも張り切らせてもらうぜ」
 キバナはそう言って、最前列に座っているホップに向かってウインクした。講義室がざわつく。ホップは少し委縮したが、キバナは慣れているのか一向に気にしていないようだった。
「前回はワイルドエリアの南側の話をしたから、今回は……」
 キバナの講義が始まる。ホップは一番の特等席で、キバナの面白く興味深い講義を夢中になって聴いた。

*
つづくかも

ポケジョブに名称だけ出てくるナックルユニバーシティ。略称を知りたい。文中に出したかった。MITみたいな。
英訳したらThe University of Knuckle なのかな。英語版でなんて表記されてるのか知りたいけど、英版攻略サイトにはご丁寧にこれだけ書かれてなかった。(最終的に出て来るやつなのでヒミツ?)
ああ、でも英語版だと街の名前違うみたいだったなぁ。
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