n - caramelizing
日記です。
読み捨てて頂ければ幸い。
ナックルユニバーシティへ(講義後)
2021.02.28 (Sun) 16:42 | Category : 小話
つづきです。
*
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一時間を超えるキバナの講義は、面白く分かりやすく、もちろん飽きもさせず、ポケモンのことならなんでも知りたいと願っているホップを夢中にさせた。
講義内容は、ワイルドエリア北側の地形と天候およびポケモンの生態系についてだった。既にワイルドエリアを踏破しているホップには、講義の内容はよく理解できた。キバナは大学の研究室が公開しているデータとワイルドエリアを知り尽くしている自分自身の経験を元に、理論的に話を進めてゆく。
講義ではホップの知ってること、知らないことが語られ、聞いているだけでわくわくした。ホップはキバナを改めて尊敬すると同時に、すぐにでもワイルドエリアへ行って講義で聴いたことを片っ端から確かめたくなった。
チャイムが鳴り、キバナはまた来月と言って講義を締めくくった。講義が終わった途端、講義室はざわざわと騒がしくなる。学生達は次の授業があるのか、次々と移動していった。
ホップは今の講義内容について質問したいことが幾つもあって、早くワイルドエリアへ行きたかったのもあり、うずうずして席から立ち上がった。講義を終えて壇上から降りるキバナを呼び止める。
「キバナさん! 質問! さっきのナックル丘陵の……」
ホップは席の前までやって来たキバナを見上げた。聞きたいことがたくさんあって気が急いてしまう。ワイルドエリアにも早く行きたい。ホップは、あれは? これは? と質問をぶつけまくった。
キバナはホップの様子を見ながら笑った。
「ちょっと落ち着け! 話はあとでしてやるから。それより」
今はそっち、とキバナが顎を動かした。ホップがよく分からないままキバナの示した方を振り向くと、机が並ぶ講義室の前後へ抜ける通路に女子学生が三人立っていた。講義前にホップが手を振った学生グループだ。
「ホップ選手! サインくださあい!」
「握手おねがいします!」
「写真もいいですか~?」
歳上のおねえさん方にそう話し掛けられて、ホップは一瞬ぽかんとした。キバナを差し置いて自分が話し掛けられるとは思わなかったのだ。
「お、オレ!?」
断る間もなくサインペンを差し出され、ホップは求められるままノートや手帳や綺麗なバッグにサインを書いた。
それから彼女たちのスマホでいっしょに写真を撮った。キバナは参加せずに、チヤホヤされるホップを一歩下がった場所から楽しそうに笑って見ている。
「ありがとうございます! ホップくん、よかったら私たちとカフェテリア行かない?」
「えっ? えーっと、でもオレこのあとワイルドエリアに行くつもりで……あっ、でも図書館にも行きたくて……」
ホップはどぎまぎしながら答えた。自分で何を言ってるのか分からなくなる。
ホップの兄やキバナならこれくらい上手く躱すに違いないが、ホップにそんな芸当はできない。
そして歳上のおねーさん方の方が一枚上手だった。
「図書館なら私たちが案内してあげるよ! それにワイルドエリアに行くなら腹ごしらえも必要じゃない? カフェテリアのランチおいしいよ!」
そう言われてしまうと最早逃げ場はなかった。別に逃げたい訳ではないが、歳上の彼女たちにくっついて行くのもなんだか躊躇われた。
そこへキバナが助け舟を出した。ホップへではなく、どちらかというと彼女たちへ。
「ホップ、行ってこいよ。ここのカフェテリア超うまいぞ。キバナさま考案スペシャルメニューもあるんだぜ~。えいようまんてん、これ食えばオレさまみたいにでっかくなれるぞ!」
キバナは冗談めかして言ったが、ホップは見事に食いついてしまった。
「えっ、なにそれ! 絶対食べる! おねーさんたち、本当にオレも行っていいの?」
「きゃー! もちろん!」
彼女たちはきゃあきゃあ言って喜んだ。キバナは何故か俯いて、肩を揺らして一人で笑っていた。
キバナは一頻り笑って気が済んだのか、顔を上げるとホップに声を掛けた。笑いが抜けきらないのか、表情が緩んでいる。
「じゃあな、ホップ。オレさま、もう行くから」
「えっ」
ホップは慌ててキバナの側へと駆け寄った。まだ講義の質問に答えてもらっていないし、聞きたいこともたくさんある。ホップは口をへの字にして、訴えるようにキバナを見上げた。
するとキバナはホップを見下ろして目を細め、いたずらっ子のように二ッと笑った。ホップの肩を掴んで、またしても強引に彼女たちの方へ体を向かせた。
「お嬢さんたち、よろしく頼むぜ。こいつ、
じゃあオレさまの弟分だから」
背後にぴったり立つキバナが、大きな手をホップの頭に置いた。ホップは弟分と言われたことに吃驚して、天を仰ぎ見るようにキバナの顔を見上げた。キバナがホップに笑顔を向ける。
女子学生たちはキバナに頼まれたことに喜んで「まかせてください!」と意気込んだ。
キバナはホップの髪をわしゃわしゃ撫でてから傍を離れた。ホップが自分の頭に手をやりながら振り返ると、キバナはもう講義室の扉に手を掛ける所だった。
「キバナさん!」
ホップが呼び止めるとキバナは振り返ったが、こちらへ手を振りつつも、もう片方の手で扉を開けた。
「ホップ! あとでウチのジム来いな。オレさまの練習相手してくれよ。あとさっきの質問の続きもな」
キバナはそう言ってから、講義室を出ていった。
「ホップくん、キバナさんと仲いいんだね! 弟分だって」
「キバナさんの練習相手なんてすごいよ!」
「なっ、仲いい……? ……かなあ?」
ホップは言いながら首を傾げた。あのキバナさんと自分が仲がいいとは思ってもなかったことだった。ジムチャレンジ以降、顔と名前は覚えてもらえていて、会えばちょっと話すくらいはするけど、仲がいいというようなものでもなかった。
(でも、今日はすごく良くしてもらったかも。たくさん喋ったし、ナックルジム来いって言われたし、バトルの約束も……)
弟分と言われたことや、頭を撫でてもらったことも嬉しかった。ホップはキバナに撫でられた髪を触って、えへへと笑った。
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