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n - caramelizing

日記です。 読み捨てて頂ければ幸い。

9x0+1 つづき(その2)

2021.03.14 (Sun) 17:54 Category : 小話

とりあえず書けているところまで。
*

 翌週、待ちに待った週末が来て、イルカは自分の部屋でそわそわしながらカカシがやって来るのを待っていた。
 忙しいカカシは案の定その週の頭から任務に行ってしまっていたが、どうやら今日帰って来るらしいとイルカも聞いていた。
 自宅の呼び鈴が鳴るとイルカはすぐに玄関へとすっ飛んで行った。ドアスコープも確認せずに玄関の扉を開ける。
 カカシの姿が目に入り、イルカはパッと笑顔になった。ハグしようと足を踏み出す。
「カカシさん! おかえりなさ……」
「あ、イルカ先生……」
 カカシの視線が何故か下へ向く。
 その瞬間、イルカの膝に向かって何か大きなものが素早く突っ込んで来た。イルカは家の中に押し戻され、玄関の土間に尻餅をついた。
「いてて……」
「ごめん、イルカ先生。大丈夫?」
 カカシは家に入れずに、ドアの外から見ている。イルカにタックルをかまして来たのは、カカシが連れていた八頭の忍犬だった。尻尾を振ってイルカにまとわりついている。
 イルカは驚いたが、つい表情を緩めて彼らを順番に撫でた。
「もしかして君たちも任務だったのか? おつかれさま」
「俺がイルカ先生の家行くって言ったら、ついて来るって聞かなくて……すみません」
 カカシが心底申し訳なさそうに言った。イルカは笑ってしまった。
「おれたちもイルカの家とまりたい〜!」
 イルカの膝に乗っていた忍犬がそう言って、イルカの腹に頭をこすりつけた。体の大きな子は側に来てイルカの顔を舐める。
「わっ、はは! いいよ、みんなも上がって」
 イルカが言うと、忍犬たちはぱあっと顔を輝かせた。反対にカカシの表情が曇る。
「あ。でもちょっと待って」
 イルカは立ち上がって洗面所へ行くと、タオルを二枚持って玄関に戻った。一枚はカカシに渡す。
「足拭くからおいで」
 イルカは手近な一匹を捕まえて、汚れている足を拭いてから部屋の中に放した。カカシと手分けして、忍犬八頭を家に上げる。
 それが済むと、イルカはようやくカカシに向き直った。改めておかえりなさいと声をかける。
「カカシさんはお風呂入りますか?」
「うん」
「じゃあ……俺、背中流しますね」
 イルカはカカシの肘に手を添えて、部屋に上がるよう促した。カカシが驚いた顔をする。
「イルカ先生……」
「嫌ですか?」
「ううん。お願いします」
 イルカはカカシを先に浴室へ行かせると、忍犬たちに大人しく待ってるように言ってから、着替えとタオルを準備して浴室へ向かった。
 カカシは既に脱衣所には居らず、浴室の洗い場で髪を洗っていた。
「カカシさん。入りますね」
 背中を向けていたカカシが振り向く。そして浴室に入って来たイルカを見て、何故かガッカリした顔をした。髪が濡れているからそう見えただけだろうか。
「服脱がないんですか?」
「えっ? 背中流すだけなので……」
 カカシは素早く手を伸ばしてイルカの腕を引っ張った。イルカは転びそうになって咄嗟に床に膝をつき、カカシの肩に寄りかかる。服が濡れてしまった。
「いっしょに入りましょ」
 カカシが言う。イルカはカカシの肩を押して前を向かせた。
「もう。ダメです。みんな部屋で待ってるし」
 イルカはカカシの背中だけ流してさっさと浴室を後にした。
「カカシさんはちゃんとあったまって来てくださいね」
「はぁい……」
 カカシがあからさまに残念そうに返事をする。イルカがちょっと笑いながら部屋へ戻ると、忍犬たちは大人しく待っていた。イルカはあとで知ったのだが、彼らはカカシから『イルカの部屋で騒いだら追い出す』ときつく言われていたらしい。
 イルカは先週から部屋の隅に置いている犬用のブラシセットを持って彼らの側に腰を下ろした。
「ほら、おいで。ブラッシングしよう。誰からにする?」
 また順番で喧嘩になるかと思いきや、一匹がイルカの前に歩み出た。どうやらブラッシングについては順番が決まっているようだ。
 イルカはカカシに教えてもらった通りにブラッシングを始めた。八頭も居るとそれぞれお気に入りのブラシがあるようで、カカシから借りている犬用グッズにはブラシが何本も入っていた。
 三匹目のブラッシングの途中で、カカシが風呂から上がって来た。
「イルカ先生、お風呂ありがと……」
 カカシはイルカと自分の忍犬たちを見て、何故か不満そうな顔をした。
「ずるいぞ、イルカ先生にブラッシングしてもらって」
 カカシはイルカの側に来ると、ブラシを一本取って腰を下ろした。順番待ちしていた忍犬が早速カカシの前に寝そべる。
「やっぱりカカシさんにしてもらう方が好きなのかな?」
「おれはイルカにしてもらうの好きだぞ」
 イルカの膝に乗っていた一匹が言った。そう言って貰えたお礼に撫でてあげると、忍犬は気持ちよさそうに目を閉じた。
 それが可愛くてイルカの表情がゆるむ。隣に居たカカシがうふふと笑った。
「俺もイルカ先生に触ってもらうの好き」
「えっ」
 カカシの言葉を聞いてイルカは真っ赤になった。先週のことを思い出してしまったのだ。
「あ、変な意味じゃなくて」
「変な意味にしか聞こえないですっ」
 イルカは赤くなったままブラッシングを続けたが、力加減を間違えて忍犬に怒られてしまった。
 結局残りのほとんどをカカシが一人で済ませ、最後に、体の一番大きな忍犬は二人掛かりでブラッシングをした。結局八頭全てブラッシングするのに一時間以上かかってしまった。
「やっと終わりましたね……」
「ありがと、イルカ先生。助かりました」
 カカシはイルカを抱き寄せて、額に軽く口づけた。
「わ。えっと、大したことは何も……」
 イルカは恥ずかしくなって視線を彷徨わせてから、カカシの胸に寄りかかった。忍犬たちの遠慮のない視線が少し痛い。
「そうだ、何か食べます? 夕飯多めに作ったんです」
「んー。それ明日食べてもいい? 今は少し寝たいな……こいつらももう眠いみたいだし」
 カカシが言った。カカシが『こいつら』と言った忍犬たちは、体を寄せ合って床に寝そべっていた。そのうちの一匹が頭を上げて大きなあくびをした。
「じゃあベッドへ……」
 カカシを先にベッドへ行かせてから、イルカは忍犬たちの為に毛布を出して寝床を作ってやった。一匹ずつ泊まりに来た時はベッドで一緒に寝れたが、今日はカカシも居るし流石に八匹全員はベッドに入りきらない。
「ごめんな。今日はここで我慢して……おやすみ」
 イルカは明かりを落としてからカカシの待つベッドへと向かった。半分手探りでふとんを捲ると、カカシの腕がイルカをベッドに引っ張り込んだ。狭いベッドなので自然と体がくっつく。
「ありがと、イルカ先生。でもあいつら、どこでも寝れるから気を使わなくて平気ですよ」
「そうは言っても、任務じゃない時くらいはあったかいところで寝たいでしょう?」
 イルカが答えると、カカシはイルカを抱きしめてくすぐったそうに笑った。
「そうですね」
「……」
 イルカはなんだか恥ずかしくなって、カカシの腕の中でじっとしていた。触れ合っている体がじわじわと熱くなってゆく気がした。
 イルカが静かにしていると、カカシは唇をすり寄せておやすみと囁いた。

*
つ、つづく…
だらだら書いててすみません。
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