n - caramelizing
日記です。
読み捨てて頂ければ幸い。
20210401
2021.04.01 (Thu) 00:00 | Category : 小話
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イルカは、その日は朝から任務受付所の仕事に当たっていた。アカデミーは春休みの最中で、この時期は朝から任務受付所に居ることが多い。
イルカは一階にある任務受付窓口が一旦落ち着くと、二階にある任務報告窓口に移動した。本当は報告窓口の担当だったが、忙しいからと一階の窓口を手伝っていたのだった。
目が回る忙しさだったなと思いながら任務報告窓口へ行くと、閑散としている窓口に火影の姿が見えた。
「ああ、イルカ」
彼女はイルカを見て軽く手を挙げた。火影と言っても既に隠居している、先代の火影だ。
「綱手様! お久しぶりです。どうしたんですか?」
イルカは驚いたものの、五代目火影の顔を見てパッと笑顔になった。五代目火影の執務を手伝う機会もあった為、親しく話し掛けて貰うことも多かった。
「カ……。六代目に会いに来られたんですか?」
五代目火影は引退はしたものの、六代目火影に呼ばれて顔を見せる事がまれにあった。六代目は自分では力不足と思っているのか、たまに五代目に相談をしているようだ。
「まあ、それもあるんだが、今日はお前に会いに来たんだ」
綱手は若く美しい顔をイルカに向けてそう言った。本来ならイルカの親ほどの年齢のはずだが、今はイルカよりも若く見える。
「はあ。私に……ですか?」
イルカが首を傾げると、綱手は距離を詰めてイルカの顔を覗き込んだ。綱手の大きな胸が、イルカの体に触れる。
「つ、綱手様?」
「お前、いつまであいつと一緒に居るんだ?」
「えっ」
イルカは咄嗟に六代目火影——はたけカカシのことを思い浮かべた。綱手の言っているのは間違いなく彼のことだ。イルカにとって、かけがえのない人。
綱手は、イルカと六代目火影の関係をよく知っていた。
「いい加減、私に乗り換えたらどうだ? ん? 忙しくて構って貰えてないんだろう?」
綱手が詰め寄り、イルカの両肩に手を置いた。その手が首の後ろに回り、綱手が体を寄せる。豊満な女性の体が押し付けられる。
どんなに迫られても防護用のベスト越しで感触がある訳では無かったが、目の毒である事は変わりない。
「私なら幾らでも相手をしてあげられるぞ?」
綱手が色を含んだような目でイルカを見上げた。イルカは目を逸らしたかったが、どうしても出来なかった。せめてもの悪あがきとして、イルカはゆっくり瞬きをした。少しは平静を取り戻す。
「あの人のこと……悪く言わないでください。申し訳ないですが、俺にはとても……いい返事はできません」
イルカが答えると綱手は特に嫌な顔もせず、悲しそうな顔もせず、むしろ楽しげな表情でイルカから離れた。可愛い顔で笑っている。
「ふうん? そんなに『六代目火影』が魅力的かねえ?」
「俺はあの人が火影だから好きな訳じゃないですよ」
綱手のことも、別に火影だったから慕っている訳ではない。それを言おうか言わまいか迷ったが、イルカは結局黙っていた。
綱手は少し驚いた表情を見せ、それから可笑しそうに笑った。
「そーか、そーか。いや、妬けるねえ」
綱手はいつまでも笑っている。イルカはだんだん恥ずかしくなってきた。
綱手は一頻り笑っても尚楽しそうな顔で、イルカの胸を軽く叩いた。
「ま、気が向いたらいつでも良い返事をくれ」
綱手は去り際にウインクをして行ってしまった。
イルカは五代目火影の背中を見送ってから、どっと疲れて大きく息を吐いた。
その油断していた所を、いきなり後ろから抱きつかれた。
「い、い、なあ!」
「うわっ!」
窓口勤務の同僚だった。今までの成り行きを助けもせずに見ていたらしい。薄情者だ。
「羨ましい! 俺も綱手様に迫られてみたい!」
「はあ……」
イルカは一層疲れて、引っ付いてくる同僚を押し退ける気にもなれなかった。同僚は羨ましい羨ましいと呪いのように口にしている。
「綱手様……俺なんか口説いてどうするんだろ。俺を当てにするほど困ってる訳ないだろうし」
イルカが呟くと、同僚が真顔になってオイと声を掛けた。
「今日は四月一日だぞ?」
「えっ?」
同僚に指摘されてから、綱手の行動は全てエイプリルフールによるものだったと気付いて、少しでも本気にしていたイルカは真っ赤になった。
「おまえ、そんなだからからかわれるんだぞ」
「う、うるさいなあ」
イルカは恥ずかしくて同僚に背中を向けた。仕事をして忘れようと思っていると、同僚が慌てた声を上げた。
「あっ、六代目!」
「えっ!?」
イルカが驚いて振り向くと、そこには誰もおらず、同僚がニヤニヤ笑っているだけだった。
「六代目には黙っといてやるよ」
「ぐ……。よろしくお願いします」
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