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日記です。 読み捨てて頂ければ幸い。

火影の夏休み 2(仮)

2021.08.01 (Sun) 23:39 Category : 小話

アカデミーが夏休みの間、火影室の仕事を手伝うイルカ先生の話。
3年前に書いた話の続きです。何年前だよw(3年
当時のテンションと合わないのでどうしようかと思って、とりあえずブログに出しときます。



 普段の出勤時間より少し早い時間に通るいつもの道は、見慣れた町並みが新鮮に感じるほど静かだった。たまたま誰とも会わなかっただけだろうが、みんな夏休みなのかな、と思いながら住宅街を抜けてゆく。
 忍者アカデミーも先週から夏休みに入り、朝の校舎は静かだった。イルカはその前を通過して、アカデミーからほど近い建物へ向かった。
 建物の入口には守衛が居て、顔見知りでもあるイルカは挨拶をして通り過ぎた。屋内は涼しく、静かだった。夏休みだからではなく、大抵の部署がまだ出勤時間前だからだ。
 階段を上った先に火影室がある。静かな廊下を進んで、火影室の扉の前で立ち止まった。隣の事務室には誰も居なかった。
 流石にちょっと早かったかな、とイルカは時計を確認した。イルカがアカデミーに出勤している時間より早い。
 つい張り切って家を早く出てきてしまった。今日から火影室で働けると思うと待ちきれなかったのだ。それに、きっと早く行けばカカシと二人きりで話せるだろうし。
 イルカは少しどきどきしながら火影室の扉をノックした。部屋の中から返事が返ってくる。
「失礼します。おはようございます、カカシさん」
 イルカが部屋に入ると、カカシは椅子に座って新聞を広げていた。コーヒーの匂いがしている。カカシはイルカを見て、ちょっと呆れたように微笑んだ。
「おはよ、イルカ先生。随分早いね」
 まだ誰も来てないよ、とカカシが言った。それはイルカも分かっていたので苦笑した。
「張り切って早く来ちゃいました。もっと遅い方がいいですか?」
 イルカはそう言いながら書斎机の前に進んだ。カカシはその向こうに座っていて、頬杖を突いてイルカをじっと見ている。そして「いや」と答えた。
「俺は嬉しいよ。この時間なら少しゆっくりできるし」
 カカシの微笑みかけられ、イルカは思わず赤くなった。カカシに手招きされて、机越しに顔を近づける。何も言わずに交わしたキスは、コーヒーの香りがした。
 イルカは、なんだかむず痒くなった。穏やかで幸せで、こんな朝は久しぶりだなと思う。これが自宅なら文句無しなのだが、今は火影室だった。望むようにはイチャイチャできないのは少し残念だった。
 カカシはイルカの顔を見て、全部お見通しと言うようにくすくす笑った。
「イルカ先生もコーヒー飲む?」
 イルカは時計に目を向けてから、はいと答えた。始業時間まではもう少し時間がある。
「いただきます。……ふふ、カカシさんと朝から一緒に居るの、久しぶりですね」
 イルカは部屋の隅にあった木製の丸椅子を持って来て、カカシの斜向かいに腰掛けた。カカシが保温ポットを手に取って、コーヒーを用意してくれる。マグカップは既に用意されていた。カカシはカカシでイルカが来るのを待っていたのだろう。
 カカシは上機嫌でコーヒーを出してから、イルカの発言に対して少し不満を見せた。
「うそ。この間イルカ先生の家行ったでしょ」
 アカデミーが夏休みに入る前の話だ。確かにカカシはイルカの家に泊まりに来たが、朝にゆっくりしている時間など無く、外がまだ薄暗いうちにイルカの家を出て行ってしまった。その時のイルカは夜更かしした所為で随分と眠くて、碌に会話も出来ずに半分寝ぼけたままカカシを見送ったのだった。いってきますのキスだけされた気がするが、眠かったので記憶が定かではない。
「あの時は朝ごはんも食べずに行っちゃったじゃないですか」
「……そうだっけ?」
 カカシがすっとぼけて笑った。
 もう少し一緒に居れたらいいのに、といつも思う。忙しい朝も、たまにしか時間の取れない夜も、もうすこしだけ。
「じゃあ、ここ手伝う間は、俺と一緒に上の部屋で寝る?」
 朝から夜まで一緒に居れますよ、とカカシが囁いた。カカシは火影になってから自宅にはほとんど帰らずに、火影室の上にある部屋で寝泊まりしていた。仕事が落ち着いていて帰れるような日は、イルカの家へ来てくれる。
 イルカはカカシの提案にとても魅かれたが、安易に頷くことはできなかった。
 今までも何度か誘われたことはあっても、イルカは火影室の上の階にはほとんど足を踏み入れていなかった。泊まるなんてとんでもない。人に何か言われるようなことになっては、火影であるカカシに迷惑が掛かる。
「だ、だめです。そんなの」
「そう? 残念」
 カカシは珍しくしつこく誘わずにあっさりと引いた。もうすこし強請られると思っていたイルカは少し寂しく思った。一度くらいなら……と思っても、なんだか言い出しづらくなってしまった。
 恐らくそれを分かって言っていたカカシは、イルカの顔を楽しそうに見ている。
「じゃあさ、イルカ先生」
 そう声が聞こえた次の瞬間には、書斎机の向こうに居たはずのカカシはイルカの傍らに立っていた。つい驚いて咄嗟に顔を向ける。そこにはもうカカシの顔が迫っていた。さっきまでカカシの顔を隠していたマスクは顎まで下げられている。
 カカシの指がイルカの顎を押し上げ、近づいた唇が重なった。
 お互いに唇を吸って、コーヒーの香りが残る舌でじゃれ合う。夢中になるのに時間は掛からなかった。
「は……カカシさん……」
 イルカは縋るようにカカシの腕を掴んだ。カカシの口元がいじわるに微笑んでいる。
「夜がダメなら、昼間イチャイチャしよ?」
「そんなの……」
「もっとダメ?」
 イルカとしてはダメとしか言えない。でも返事はしないでカカシとキスを続けた。ダメだけど、わかってるけど、少しくらい、少しだけ……と思ってしまう。
 カカシはイルカに何も言わせないようにキスを続ける。椅子に腰かけていたイルカは、そのうちもじもじと足を動かした。
「カカシさん……」
「うん」
 唇を寄せ合ったまま甘い息を吐いて、もう一度求め合う。でも隣の事務室に人の気配を感じて、お互いにぴたりとキスをやめた。
 わいわいと話し声が聞こえて来る。どうやらみんな仲良く出勤して来たようだ。
 カカシはイルカから離れて、マスクを鼻まで引き上げた。イルカがその様子をぼんやり眺めていると、カカシが目を細めて笑い掛けた。何故か、途端にさっきまでの行為が恥ずかしく思えた。
「お、おれ、みんなに挨拶してきますっ」
 イルカはぱっと立ち上がって、火影室を出て行こうとした。カカシをそれを引き止める。
「待って。俺が行って話してくるよ。イルカ先生はコップ片しておいてくれる?」
 カカシが机の上のマグカップを示す。そしてイルカに顔を寄せて囁いた。
「その間に、その顔なんとかしといて」
「えっ?」
 イルカはきょとんとしてしまった。自分の顔を手で触る。顔は洗って来たはずだし、髭も剃って来たはず。イルカがカカシの指示を理解できずにいると、カカシはくすくす笑った。
「そんなやらしい顔で人前に出れないでしょ?」
「なっ……」
 イルカの顔が一気に熱くなった。真っ赤になっているのが自分でも分かる。これで余計に人前に出れなくなった。
 カカシは笑いながら火影室を出て行った。すぐ隣の部屋から話し声が聞こえて来る。
 イルカは言われた通りにマグカップと保温ポットを持って火影室を出て、事務室とは反対側にある給湯室へと向かった。とりあえず流し台でマグカップを洗う。
 なんとかしてと言われても、イルカは困った。なんとかしようが無いし、自分がどんな顔をしているのかもよく分からない。ただ、さっきのキスやカカシの言葉を思い出すと顔が熱くなった。全然なんとかならない。
 マグカップと保温ポットを洗い終えると、イルカは濡れたままの手で自分の顔を触った。少し熱い。
「あー。これから毎日こんな感じかあ……」
 嬉しいけど、困る。
 アカデミーが夏休みの間は火影室の仕事を手伝うと言ったことを、イルカは少し後悔していた。
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