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日記です。
読み捨てて頂ければ幸い。
忍犬を一晩預かる話
2024.11.14 (Thu) 22:33 | Category : 小話
書けたとこだけ。次に忍犬本作る時に入れようと思って…
*
イルカが風呂から上がると、忍犬がベッドの上で丸くなっていた。もう寝てしまったのかと近くへいくと、聞いたこともない声でピイピイ鳴いている。
イルカはベッドにそっと腰かけ、忍犬の体をそっと撫でた。どこか痛いのだろうか。尋ねても忍犬はピイピイ鳴くだけで教えてくれない。
今までもカカシの忍犬たちを預かったことはあるが、忍犬がこんなふうに鳴く様子はイルカには初めのことだった。
「カカシのとこ、いきたい」
「えっ……」
忍犬は物寂しそうに鳴いている。イルカはすぐに着替えると忍犬を抱きかかえて家を飛び出した。大して遠くもない道のりを、住宅街の屋根の上に出て最短ルートを駆けて行った。
火影室のある建物は静かだった。廊下の照明は最小限で薄暗く、手前の事務室も火影室も明かりは消えていた。イルカは火影室の前を素通りして廊下の奥へと向かった。上の階へ続く細い階段がある。上の階は火影の私室だった。カカシは普段からそこで寝泊まりしていた。
普段は暗部が警備をしているようだが、この時は誰にも会わなかった。イルカは寝室まで行くと部屋の扉を控えめにノックした。少し間が空いて、静かに扉が開いた。
「カカシさん」
「イルカ先生?」
イルカの少し焦った声を聞いて、カカシがドアを大きく開けた。どうしたのと部屋から出て来る。
「この子が……」
イルカは事情を説明して、腕に抱いていた忍犬をカカシに見せた。丸くなってピイピイ鳴いている。
「どこか悪いのかも……変なもの食べさせちゃったのかな……」
「入って」
カカシは忍犬を一瞥するとイルカを部屋の中へと引き入れた。
火影の寝室には棚とベッドぐらいしか物が無い。カカシは元気のない忍犬を預かると、ベッドに腰を下ろして膝の上で忍犬を抱えた。
イルカは床に膝を突いて座り、忍犬の様子を覗き込んだ。それから顔を上げて、ベッドに座るカカシの顔を見上げる。
「すみません、カカシさん。俺がちゃんと見てなかったから……」
「大丈夫ですよ、イルカ先生」
カカシは指先でイルカの頬を撫でてから、その手で忍犬の体を撫でた。顔を撫でたり、口を開かせてみたり、手足やお腹も触っている。イルカはその様子をじっと祈るように見ていた。
カカシは簡単な診察を終えると忍犬をベッドの上に寝かせて背中をやさしく撫でた。忍犬は安心したように穏やかな表情でカカシを見ている。
「んー、なんともなさそうだけど……。イルカ先生、少し見ててもらえる? 湯たんぽ持って来るから」
「はい」
カカシは部屋を出て行った。カカシの代わりに忍犬の側に腰を掛ける。
イルカは忍犬の様子を見てほっと息を吐くと、カカシがしていたようにやさしく忍犬の背中を撫でた。忍犬に嫌がる素振りはなく、イルカの手に身を任せている。
「よかった。なんともなくて……カカシさんから離れて寂しかっただけか?」
イルカがそう問いかけると、忍犬は顔を体の方へ向けてイルカの手を舐めた。くすぐったくて、イルカは思わず笑った。
タオルに包んだ湯たんぽを持って戻って来たカカシは、それを忍犬の寝そべっている毛布の下に入れた。忍犬は心地よさそうに目を閉じた。
カカシは忍犬の様子を見てひと息つくと、今度はイルカに顔を向けた。
「イルカ先生、風呂入って来たら? 髪濡れたままじゃ風邪ひくよ」
カカシに言われてイルカは自分の後頭部に手をやった。風呂上がりにタオルで拭いて来ただけの髪は湿ったまま冷えている。
「でも、俺もう帰りますから」
家に帰ってもう一度風呂に入って、一人で寝よう。イルカはそう思った。忍犬のことはまだ心配だったが、あとはカカシに任せておけば問題ないだろう。
すると、カカシが何気ない調子で言った。
「泊まって行きなよ」
イルカは、即答できなかった。まだ一緒にいたいという気持ちが強かった。
でも、泊まっていくのは憚られた。泊まったら、きっとそれだけでは済まないだろうし、カカシに迫られたらイルカもきっと断れない。
ここがカカシ個人の家ならイルカも構わないが、あくまで火影の私室だった。すぐ下の階が火影室だ。そんな場所でイチャイチャできるわけがない。今までカカシに何度か誘われたが勿論断っている。部屋にちゃんと入ったのも今日が初めてだった。
イルカが返答に迷っていると、カカシがやけに寂しそうな目で見つめてくる。それが物寂しそうに鳴いていた忍犬のようで、イルカは帰るとは言えなくなってしまった。
「……カカシさんが良いのなら」
「もちろん、いいよ」
カカシは穏やかに答えた。
「……じゃあ、風呂借りますね」
「いっしょに入ろうか?」
「ダメです。カカシさんはその子の傍にいてあげてください」
イルカは一緒に来ようとするカカシを押し止めた。イルカはカカシが忍犬の側に腰を落ち着けるのを見届けてから、寝室を出て、教えてもらった浴室へと向かった。
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