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特製かぜぐすり
2025.11.03 (Mon) 19:54 | Category : 小話
先生が風邪をひいた話
2025/10/24
2025/10/24
仕事を終えて家に帰るなり、イルカはベストも脱がずにベッドに倒れ込んだ。怠い体が布団に沈み込む。無理をしていたつもりはなかったが、横になってしまうともう動けなかった。
「やば……寒気するなぁ……」
本格的な風邪の気配をひしひしと感じながら、イルカは下敷きにしている掛け布団を引っ張って体に巻きつけた。ちゃんとベッドに入った方がいいと分かっているが、動くのは億劫だった。
そのまま寝かけた時、近くでカカシの声が聞こえた。目を開けると、カカシがベッドに手を突いてイルカの顔を覗き込んでいた。
「カカシさん……」
口から出た自分の声はかすれていた。カカシの手がイルカの額当てを押し上げ、額に触れる。
「イルカ先生……体調悪いの?」
「風邪引いたみたいで、寒気が……」
「薬は?」
イルカは首を振った。滅多に風邪を引かないこともあり、薬は常備していなかった。カカシの呆れたような視線が刺さる。
「ね、寝てれば治りますから」
イルカはカカシの手を払い除けるように、頭まで布団を被って丸くなった。布団に包まっても背筋がゾクゾクしている。
それからカカシは一旦ベッドを離れたようだが、暫くすると戻って来てイルカを起こした。
「イルカ先生、これ飲んで。少しは楽になるはずだから」
カカシは体を起こしたイルカに、湯飲みを差し出した。薬のようだった。温かい。
「作ってくれたんですか?」
市販の粉薬ではなかったから、単純にそう思った。薬草についてはアカデミーでも習うし、忍者なら自分で煎じることも珍しくはない。
「間に合わせだけどね。体温まるよ」
イルカはかすれた声でお礼を言って、温かい湯飲みに口をつけた。ちびちびと飲み込む。薬の味はほとんどしなかった。
「これ、なにが入ってるんですか?」
間に合わせと言っていたが、薬になるようなものが家にあっただろうか。
するとカカシがいつもの調子で答えた。
「媚薬薄めたやつ」
そう聞いた瞬間、盛大にむせてしまい、イルカは湯呑みのお湯を手にこぼした。
「っ、げほっ……びっ……???」
「大丈夫? イルカ先生」
カカシがすぐにタオルを持ってきて、イルカの口元と手、そして濡れた布団を拭いた。甲斐甲斐しく動くカカシの手元を見ながら、イルカはドキドキしていた。
媚薬と聞いてイルカの脳裏に浮かんだのは、数日前のカカシとの一夜だった。いろいろあって媚薬を口にして、いつもとは少し違う素敵な夜を過ごした――あの時使い切らなかった媚薬が、まだ残っていた気がする。
「なん……っ」
「寒気してるなら、体温が上がる媚薬は効くでしょ? かなり薄めたから大丈夫だよ」
カカシがもっともらしく言った。確かに一理ある……ような気がする。
普段なら突っ込むか言い返すかしたが、今のイルカにはそんな気力も判断力も無かった。
イルカはカカシの言い分に無理やり納得し、残りの薬湯を飲み干した。頭の中では媚薬を飲んだ夜のことを思い出していた。
しばらくすると、体が温まって来たのか寒気は消えていた。本当に効果があったことに、イルカは少し驚いていた。イルカをあんなにも乱す媚薬が、風邪の症状を和らげてくれるなんて。何事も使いようだと実感する。
「楽になってきました」
「よかった。なにか食べる?」
「はい」
それからカカシが作ってくれた卵雑炊を食べて、ベッドでゆっくり休んだ。食欲はあったので、一晩寝ればすくに良くなりそうだった。
うとうとしていると、ベッドのマットレスが僅かに沈んだ。横を向いて寝ていたイルカの背中を、温かい体が抱き込む。寝支度を済ませてきたカカシだった。
「カカシさん? 一緒に寝るんですか?」
「だめ? この方があったかいでしょ? 床で寝たら俺が風邪引いちゃうよ」
そう言われると、イルカはダメとは言えなかった。背中をカカシに預けたまま目を閉じる。
早く寝てしまおうと思ったが、さっきまでうとうとしていたのに目が冴えて仕方なかった。
「カカシさん……」
「どうしたの? まだ寒い?」
「そうじゃなくて……体がポカポカしてて……」
イルカはカカシの腕の中でもぞりと動いた。二人の体温がこすれる。温かくて、ドキドキした。
「その……ちょっとだけ、したい気分……」
イルカは枕に半分顔を伏せて呟いた。あまりに小さな声でカカシにも聞き取れないかと思ったが、返事はしっかり返ってきた。
「体温が上がったせいだね。今日は我慢して」
「そ、そうですよね」
イルカがしょんぼりすると、カカシの腕がやさしく抱き寄せた。体が更に密着して、薄い寝間着越しにやわらかい体温が伝わる。
「か、カカシさん」
「イルカ先生。風邪治ったら、いっぱいしよ」
「……はい」
イルカは残念な気持ちと、うれしい気持ちを抱えながら、カカシの腕の中でゆっくりと目を閉じた。もうしばらくは、イルカの体は火照っていた。
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