n - caramelizing
日記です。
読み捨てて頂ければ幸い。
室内訓練場で
2025.11.03 (Mon) 19:56 | Category : 小話
書くなら1ページ漫画なんだけどなぁ…と思いつつ、描けないのでSSに仕立てました。
2025/11/26
2025/11/26
休日のアカデミーは、昼間でも静かだった。里の大通りは賑わい始める頃だが、人気のない校舎はひっそりとしている。
校舎の端から渡り廊下で繋がる室内訓練場では、六代目火影が忍犬たちを相手に手合わせをしていた。使い込まれた床板を踏む音と、忍犬たちの息遣いだけが響いている。六代目火影――カカシも飛び掛かる忍犬を躱したりいなしたり動いてはいるが、微かな足音が聞こえるだけで静かなものだった。
イルカは板敷きの訓練場の隅に姿勢よく座り、その様子を見ていた。
カカシの動きはお手本のように無駄がない。少し癖はあるが、本人の実力の前では些細なことだろう。忍犬たちが一斉に向かって来ても、淀みない足運びで躱していく。
カカシは防戦一方というわけでもなく、隙が見えるとすぐに攻撃へと転身した。ただそれは忍犬が防げる程度の一撃か寸止めで、攻撃に入る動きを確認しているようだった。
イルカはその一挙手一投足をじっと目で追っていた。カカシの任務に同行することがついぞ無かったイルカには、見る機会の無かったものだ。訓練とは言え、貴重な時間だった。
四頭の忍犬がじりじりとカカシを囲む。カカシが僅かに腰を落として攻撃のそぶりを見せると、忍犬たちは飛び退って距離を取った。みな油断せずに唸っている。
カカシは忍犬たちの反応に満足し、五分近く続いていた手合わせはそこで終了になった。
カカシが忍犬たちに休憩を言い渡すと、彼らは途端に表情を緩めて、尻尾を振りながらイルカの方へ駆けて来た。遠慮なくイルカに迫って撫でを要求してくる。
「お疲れさま」
イルカが両手で忍犬たちを順番に撫でると、彼らは訓練中の真剣な表情が嘘のように笑顔になった。そんなところもカカシにそっくりだなと思う。
そのカカシは、訓練場の真ん中に立ったまま呆れた様子で忍犬たちを見ていた。
「カカシさんも、お疲れさまです」
イルカは側に置いていた水筒を手に取ってカカシに差し出した。カカシは表情を緩めて側へ来ると、水筒を受け取って言った。
「イルカ先生がいてくれて良かったよ。ここ借りられるし。あんまり外出るとシカマルがうるさいからさ」
なにかあった時に火影が所在不明では困るからだろう。その点、アカデミーの室内訓練場なら火影室からも近く、すぐに連絡がつく。イルカは苦笑した。
「室内訓練場の鍵くらい、いつでも貸して貰えるでしょう。火影様なんですから」
「そういうわけにもいかないでしょ」
カカシは飲んだ水筒を床に置きながら答えた。撫でてもらえると思ったのか、近くにいた忍犬が顔を上げる。
カカシは忍犬をひと撫ですると、訓練場の真ん中に戻った。まだ続けるつもりらしい。
「イルカ先生も一緒にやろうよ」
「……いえ、遠慮しておきます。俺では役に立たないでしょうし……」
「そんなことないと思うけどなあ」
「はは……あなたの相手はベッドの中だけで間に合ってますよ」
イルカが調子に乗ってそう言うと、カカシは笑うでもなくイルカをじっと見つめていた。やや見開かれた目が、困ったように何か訴えている。
するとカカシの視線が静かに動き、イルカはその動きにつられて顔を動かした。その先は室内訓練場の入口で、そこには面倒くさそうな顔をしたシカマルと、顔を真っ赤にして今にも叫び出しそうなサクラ、そしてよく分かってないナルトが立っていた。
聞かれた――と思ったイルカは、一気に顔が熱くなった。咄嗟に声が出て来ない。周囲にいた忍犬たちも呆れているように見える。
なんとも言えない気まずい空気の中、カカシが助け舟を出すように声を掛けた。
「どうかした?」
「あ。訓練中すんません。ちょっと相談があったんで……」
シカマルも微妙な空気を無視して答える。イルカは居た堪れず、忍犬を膝に抱えて気配を消すように大人しくしていた。
「わかった。それなら火影室で話そう」
「待って、待って! カカシ先生! オレとも手合わせして!」
シカマルを押しのけて、ナルトが元気よく主張した。カカシは一瞬悩んだようだが、あっさり断った。
「やだよ。訓練は終わり。ここもう閉めるから。イルカ先生、鍵お願い。あと、そいつらのことも」
「は、はい」
カカシは忍犬たちをイルカに任せて、うるさいナルトたちを連れて先に訓練場を出て行った。文句を言うナルトの声が遠のいていく。
イルカは室内訓練場の床に座ったまま、手で顔を覆って大きく息を吐いた。顔が熱い。軽口なんて叩くんじゃなかった。
「あとでどんな顔して会おう……」
教え子たちと、カカシの顔が頭に浮かぶ。周囲にいた忍犬たちが、不思議そうにイルカを見ていた。
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