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日記です。 読み捨てて頂ければ幸い。

晴れのお守り

2025.11.03 (Mon) 19:53 Category : 小話

任務へ行く前のSS
2025/9/27


 急遽任務へ出ることになり、頭の中で装備《もちもの》の確認をしながら上忍待機所の外へと出る。さっきまで晴れていたはずの空は、雲行きが怪しくなっていた。移動中だけでも雨は避けたいが、空は今にも降り出しそうで、さっさと出発したほうが良さそうだった。
 里を出る前に運良くイルカに会えないものかと辺りを見回すが、もちろんイルカの姿は見えない。
 どこに行ったら会えるだろう。アカデミーか、任務受付所か、それとも一楽に寄れば居るだろうか。
 全部寄ってる時間は無いなーーカカシは西の空と腕時計を確認して、もう行こうと足を踏み出した。すると、よく通る声がカカシを呼び止めた。
「カカシさん!」
 足を止めて、声の方を振り向く。会いたいと思っていた人が目の前に現れた。
「イルカ先生……」
「よかった、間に合った! これ、任務先の情報です」
 イルカはそう言って持っていた紙をカカシに手渡した。電書鷹に届けさせるつもりだったのか、紙は長細く畳まれていた。
「ありがと……受付所に居たの?」
「ええ。窓から見えたので慌てて来ました」
 イルカはいつもの明るい笑顔で話した。
 カカシは嬉しかった。会いたいと思っていたし、別に追いかけて来る用でもなかったのに、イルカは来てくれた。
 カカシの気持ちはそこで決まった。
「イルカ先生」
 カカシは自分の口元に手をやって、マスクを引き下げた。向かいにいたイルカが驚いた顔をする。素顔を見せるのは初めてかもしれない――一緒に一楽のラーメンは何度も食べたけど。
 カカシは片手をイルカの腰へと伸ばした。引き寄せようとした瞬間、イルカが自ら前へ歩み出た。互いのベストの胸がぶつかる。
 えっ、と思った瞬間、イルカの顔が目の前に迫り、カカシの唇を塞いだ。
 嬉しい――と思うよりも、頭が真っ白になっていた。イルカの唇が動いて、カカシの唇にそっと吸いついた。
 カカシが体の奥から沸き上がってくる熱を感じた瞬間、鋭い歯に下唇をがりっと噛まれた。
 痛みが腑抜けた頭を一気に晴らした。代わりに戸惑いと期待が、胸にうっすら広がっていく。
 触れていた唇が離れ、イルカが体を引いた。それでも近いイルカの顔は、見間違いでなければ真っ赤になっていた。
 カカシは何か言おうと口を開いたが、イルカの声がそれを遮った。
「……文句は、帰ってきてから聞きます」
 イルカは申し訳なさそうに自分が噛みついた唇を見てから、カカシの視線に気づいて恥ずかしそうに目を逸らした。
 カカシは噛まれた唇を舐めて、黙ってマスクを鼻まで引き上げた。血は出ていないようだった。
「……ありがと、イルカ先生。目が覚めた」
 カカシは静かに息を吸って、ゆっくり吐いた。
 イルカに会うのはこれで最後かも知れないと、少しでも思った自分を叱咤する。イルカもそれが分かったから、こんなことをしたのだろう。
「カカシさん……。その、すみません。噛んで……」
 カカシは申し訳なさそうに言うイルカを眺めて、気にしなくていいよと笑った。これから任務へ行かなきゃならないというのに、天気も悪くなりつつあるのに、カカシの気は軽かった。
「帰ってきたら、お礼、するね」
 カカシはイルカの耳元に顔を近づけて、わざとらしく囁いた。イルカの目が驚いたように見開かれ、カカシの目を捉える。
 カカシは目を細めて笑ってみせると、イルカの肩を抱き寄せ、いってきますと声に出した。真っ赤になっているイルカの顔を目に焼きつけてから、ようやく任務へと出発する。
 いってらっしゃい、と応じたイルカの声が、いつまでも耳に残っていた。
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