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日記です。 読み捨てて頂ければ幸い。

いつでも肩もみします(続き)

2020.12.15 (Tue) 00:02 Category : 小話

イルカ先生が肩もみしてくれる続き。出したと思ってたんですが、出してなかった?
でもデータが見当たらなくて、とりあえずバックアップ用のがあったの出します。

*


 それからイルカが「肩を揉みましょうか」と声を掛けることは無くなった。火影室に来ることも少なくなった。来ても用を済ませてすぐに自分の仕事へ戻ってしまう。ほとんど話もしないし寂しかったが、忙しい時期でもあったから仕方ないとカカシは思うようにしていた。でも、もしかしたらイルカの気に障ることを何かしてしまったのかも知れないとも考えていた。
「最近、イルカ先生来ないっすね」
 何かの折にシカマルが言った。カカシは内心動揺したが、顔には出さなかった……と思う。シカマルはカカシの動揺など気づいていないようだった。来たらまた手伝ってもらいたいなあ、などと言っている。何度かイルカに仕事を手伝ってもらって味を占めたらしい。味を占めたのはカカシも同じことだが。
「イルカ先生も忙しいんでしょ」
 カカシは手元の書類を見ながら素っ気なく言った。シカマルはしばらく火影室に居たが、用が済むと出て行った。
 火影室に一人になったカカシは山積みの書類に目を通して判を押す作業に専念したが、半分ほどこなして書類を放り出した。椅子の背もたれに寄り掛かって溜め息を吐く。
 カカシは座ったままぼんやりしていたが、ふと思い立って机の上のペントレイから細身のクナイを手に取った。黒い刃先で親指の腹を浅く切る。カカシは指先に滲んだ血を確認してから慣れた手付きで印を結んだ。
 ぽふ、と書斎机の上で白煙が弾ける。口寄せしたのは小型の忍犬だった。
 まだ何も言っていないのに、忍犬は呆れたような目をカカシに向けた。
「またか」
「そう言わずに頼むよ」
 カカシは忍犬を持ち上げると自分の肩に乗せた。そのまま書斎机に上体を伏せる。忍犬の小さな足がカカシの肩を踏んだ。
「もうちょい首の方……」
「おれはあんまじゃないんだぞ」
 忍犬はカカシの頭に尻を向けると後ろ足で頭を軽く蹴飛ばした。機嫌を損ねたようでカカシの背中の上で体を伏せる。カカシは机の上で顔を横に向け、肩から顔を見せている忍犬に目を向けた。
「お菓子……ありますけど?」
「わかった、やる」
 忍犬はすぐにぴょこっと体を起こして、カカシの肩を踏みつけ始めた。お菓子で釣った所為か足取りがるんるんしている。
 最近はこうして忍犬に肩を揉んでもらっていた。他人に頼むのは気兼ねするし、相手が気心の知れた忍犬ならば気も楽だった。ただ、忍犬の足踏みマッサージはなかなか悪くなかったが、イルカの手を思い出すと物足りなさはあった。
 カカシが机に突っ伏してぼんやりしていると、火影室の扉がノックされた。叩かれ方を聞く限り、急ぎではなさそうだ。
「はーい」
 カカシは机の上から返事をした。扉が開く。微かな足音が近づき、書斎机の前で止まった。
「カカシさん? 何してるんです?」
 カカシは上体を伏せたまま顔だけ前に向けた。積み上げられた書類の向こうにイルカが立っていた。
 イルカはカカシと、その肩に乗って足踏みしている忍犬を見て、目を細めて笑った。
「ふふ。カカシさんの忍犬ですか? 肩もみ?」
 イルカは愛らしいものを眺めるように表情を和らげていた。カカシは少し気恥ずかしくなり、机に伏せていた上体を起こした。背中に乗っていた忍犬は、器用にカカシの肩の上に移動した。
「ちょっと肩凝ってたから」
 嫌味のつもりはなかったが、イルカは少し気まずそうな表情を見せた。カカシはイルカにして欲しかったが言い出せなかった。イルカもしましょうかと言わないから、きっと嫌なのだろう。やっぱり自分が何か気に障るようなことをしただろうか。自覚は無いが、イルカがこの態度なのだから、きっと何かしてしまったのだろう。カカシはイルカに気づかれないようにそっと目を逸らした。
「なんて名前なんですか?」
 イルカが訊ねる。カカシは突然問いかけられて目を向けた。イルカがやたらやさしい眼差しを向けている。
「その子」
「ああ……」
 イルカが訊ねたのは忍犬のことだった。カカシは忍犬の名前を教えてあげた。
 イルカはやさしい声で犬の名前を呼びながらカカシの肩に手を伸ばした。そこに居た忍犬の頭を撫でる。あの、温かい手で。
 忍犬が目を上げて、機嫌よく尻尾を振った。きっとイルカの手を気に入ったのだろう。
「ふふ。いい子だね」
 カカシは羨ましかった。自分もイルカに触って欲しい。
 カカシはほとんど無意識に手を上げて、イルカの手を掴んだ。忍犬の頭を撫でていた手がピタリと止まる。
「……カカシさん?」
 イルカは戸惑ったような声を出した。
「すみません。触りすぎでしたか?」
「……」
 もっと触って欲しいと思った。忍犬ではなくて……でもそんなこと口に出せる訳もない。
「……いや。ごめん。なんでもない」
 カカシはイルカの手を放した。
 肩に乗っていた忍犬を書斎机の上に移動させ、好きなだけ撫でてやってくれ、とイルカの方へ犬を向ける。
 イルカは一度引っ込めた手をなかなか出さなかった。机に積み上がっていた書類が邪魔なのかも知れない。
 イルカは躊躇いがちに机の上に手を出すと、忍犬の頭の上を素通りしてカカシの顔に手を伸ばした。イルカの手が、カカシの頬に、指先が、目の下の肌を撫でる。
 イルカの手は指先まで熱くて、カカシは心臓が止まるかと思った。吸い込んで止めた息を、ゆっくり吐き出す。
「……イルカ先生?」
「少し疲れてます? あんまり無理しないでください」
 イルカが心配そうな顔でカカシを見つめて言った。熱いイルカの手の下で、カカシの頰が熱を持つ。
 カカシは何も考えずにイルカの手首を掴んだ。
「イルカ先生……」
 頭が熱くて、何も考えられない。何か言わなきゃと思うのに言葉も出てこない。手の平が熱くて恥ずかしかった。イルカにはきっとばれているだろう。
「イルカ先生、俺……」
 イルカはカカシの言葉をじっと待っている。でもカカシは何か言う前にぱっと手を放した。部屋の外に人の気配を感じ、イルカも咄嗟に手を引っ込める。
 部屋の扉が開いて、若い中忍が顔を覗かせた。
「六代目、そろそろ時間です」
 カカシが今行くと返事をすると、中忍は扉を閉めて引っ込んだ。これから会議の予定だった。
「ごめん。行かなきゃ」
 カカシは席を立って、机の上で大人しくしていた忍犬に火影室の留守番を頼んだ。
 書斎机を離れて扉へ向かう。イルカは机の側に立ったままだった。
「あ……火影様。会議のあとは、また書類仕事ですか?」
「……まあ、そうですね」
「そしたら、俺、手伝いに来ますね」
 イルカは少し照れたように言った。カカシは言われた言葉の意味をすぐには呑み込めなくて、一拍置いて頷いた。
「ありがとう、イルカ先生。助かります」
 カカシは行こうとして、イルカに声を掛けた。
「後で肩揉んでくれる? 会議の後すっごい肩凝るから」
「はい」
 イルカが笑って頷く。カカシは断られなかったことにほっとして表情を緩めた。
「じゃ、あとで」
 カカシは火影室を出ると、心なしかうきうきしながら会議室へと向かった。
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