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日記です。 読み捨てて頂ければ幸い。

熱が出た話

2022.06.07 (Tue) 21:34 Category : 小話

先日ワクチン接種3回目だったんですが、思ってたより熱が出て翌日はごろごろしてました。熱のせいで寝れなかった…
…ので、六代目にも熱出してもらいました。面白くはないです。


*

 暦の上では新緑の季節で暑い夏も間近という頃だったが、木ノ葉の里では寒暖差の大きい日が続いていた。汗ばむような日と肌寒い日が交互に訪れ、天気も雨が降ったり止んだりと不安定で体調を崩す者も多かった。
 夜中に激しく雨の降った翌朝、ベッドで目を覚ましたカカシは仰向けに寝たまま、まずいなと思った。体温が高い気がしたのだ。
 のろのろと体を起こすと案の定怠くて、頭が少しふらふらした。
(あー、これは熱あるな)
 カカシはそう思ったが体温は計らずに、普通に着替えてキッチンへ向かった。足取りは覚束なくて、思うように体が動かない。
 でも頭はすっきりと冴えていてちゃんと空腹も感じている。それならまあ大丈夫だろうと判断して、出勤前に軽い朝食を摂った。今日は大した予定もないし椅子に座ってるだけだから、多少体調が悪くても大丈夫だろうと思ったのだ。
 朝食を済ませるとカカシは火影室へと出勤した。出勤と言っても階段を下りて行くだけだ。火影室の上の階が住居になっていて、カカシは火影になって以降大体そこで寝泊まりしていた。
 徒歩一分で出勤を終え、カカシは書斎机の椅子に座った。机の上には昨日から積まれている書類の山がある。明日は会談の予定があって手を付けられないので、今日のうちに終わらせたかった。
 始業前に少しだけ書類の山を減らすことはできたものの、カカシは達成感より疲労を感じて机に肘をついて凭れた。
 ぼんやりしていると火影室の扉が叩かれた。
「はい」
 カカシはほとんど無意識に返事をした。火影室に入って来たのはシカマルだった。
「おはようございます」
「……おはよ」
 シカマルは何故か部屋に入った所で立ち竦んでいた。じっとカカシを見ている。カカシがどうしたのかと思っていると、シカマルは書斎机の前まで進み出た。
「今日はコーヒー飲んでないんすね」
「ん? ああ……」
 カカシは毎朝、火影室で珈琲を淹れて飲んでいた。今日は流石に飲む気にはなれなかった。
「ちょっと手を貸してくれませんか?」
 書斎机の前まで来たシカマルは、そう言って自分の手の平を出してみせた。カカシは不思議に思いながらもシカマルの真似をして手の平を差し出した。シカマルがその手を掴む。
「……六代目、熱ありません?」
「よく分かったね」
「あんたの下に一年居るんですよ」
 それぐらいわかります、とシカマルは不機嫌そうに言った。彼は案外、人のことをよく見ている。マスクして座っていればバレないかと思ったが、考えが甘かったらしい。
「今日は休んでください」
「えー。でもこれ終わらせたいし……」
「明日の予定は外せないんです。先に体調戻してください」
 シカマルの言うことは尤もだった。明日は絶対に外せない。それでもカカシが渋ろうとすると、シカマルは有無を言わせない芯のある声で先制した。
「俺がイルカ先生に怒られるんで」
 そう頼まれてしまうとカカシも素直に聞くしかなかった。
「分かった。今日は休ませてもらうよ。何かあったら呼んで」
「はい」
 カカシは席を立つと、ふらふらと火影室を出た。余程覚束ない足取りに見えたのか、シカマルが側に来て肩を貸してくれる。
「大丈夫だから」
 カカシは一人で寝室へ戻ると、そのままベッドに倒れ込んだ。 



 イルカが任務受付所で預かって来た書類の束を持って行った時には、火影室には誰も居なかった。机の上に書類だけ積み上がっている。カカシはちょうど席を外しているらしい。
 イルカは少し残念に思った。来たついでにちょっとくらい話せるかと思ったのだ。
 イルカは持って来た書類を勝手に置いていくのもどうかと思い、一度部屋を出てすぐ隣の事務室を覗いた。事務室にはシカマルと事務員が居て、それぞれデスクに向かって仕事をしていた。
 イルカは開けっ放しになっている事務室の扉をノックした。
「お疲れ。受付所から持って来たんだけど……」
「あ、イルカさん! 預かります」
 出入口に近いデスクに居た事務員が席を立って、イルカから書類を受け取った。
「六代目は? 火影室、誰も居なかったけど」
 イルカは事務室の壁に掛けてあるホワイトボードに目を向けた。そこにはいつも、その日の火影とシカマルの予定が書かれていた。今日はシカマルは一日在室と書かれていたが、火影の予定は空白になっていた。
「あ~……六代目、熱があるみたいで」
 そう答えたのは奥の席に座っていたシカマルだった。
「部屋で休んで貰ってます。大丈夫とは言ってたんすけど、イルカ先生、様子見て来てくれないっすか?」
 シカマルにそう頼まれたのもあり、イルカは火影室の上の階へと向かった。



 ひんやりした手が額に触れて、カカシはぼんやりと目を開けた。目の前にイルカの顔があった。少し心配そうな顔をしている。
「イルカ先生……?」
「熱あるって聞いて……大丈夫ですか?」
「んー……うん……」
 カカシが怠い体を起こすと、イルカが水を持って来てくれた。カカシがマグカップで水を飲んでいる間、イルカは枕元をじっと見下ろしていた。
「ところで、これは?」
 イルカがやや恐い声を出した。カカシが寝ていた枕元には書類が積まれていた。火影室に積まれている書類の山を思えば、かなりささやかな量だ。寝落ちする前まで少しだけ手を付けていた。
「ちゃんと寝てなきゃダメじゃないですか」
「はは……すみません」
 イルカは書類の束を一枚残らずサイドテーブルに移動させてしまった。カカシが手を伸ばしても届かない。
「薬は飲んだんですか?」
「俺、薬は効きにくいので……」
 薬や毒には耐性が付いている為、風邪を引いても自力で治すしかなかった。サクラを呼んで点滴でも打って貰えばよかったなと思った。
「余計に寝てなきゃダメじゃないですか」
 イルカが呆れたように言った。
「じゃあ寝るから傍にいて」
 カカシはベッドに横になってから、イルカの手を掴んだ。隣に来てと目で訴える。
 イルカは何も言わずにカカシの隣に来て寝そべった。少し面倒くさそうにカカシの体をポンポン叩いてあやし始める。
 カカシはイルカにくっつくと顔を伏せてくすくす笑った。
「子供じゃないですよ」
「早く寝てください」
 いつまでも笑っているとイルカの腕がカカシの体に回される。カカシが目を向けると額にキスをされた。
「ほら、目閉じて。いい子で寝てくれたら、元気になってからご褒美あげますよ」
「ははは。ほんとに? じゃあ明日貰いに行きますね」
「……体調良くなってなきゃあげないですよ」
 イルカが呆れながら答える。
「うん。わかってます。すぐ治すから……」
 イルカがやさしく撫でてくれる。心地よくて落ち着く……。イルカの傍らでじっとしていると目蓋が重くなってくる。二人で寝る時はいつもはイルカの方が先に寝てしまうのに不思議だ。
「ゆっくり休んでください」
 イルカの唇がカカシの目蓋に触れる。明日は唇にしてもらおう。カカシはおやすみと呟いてそっと目を閉じた。

*
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