忍者ブログ

n - caramelizing

日記です。 読み捨てて頂ければ幸い。

Date by Mission Order

2026.05.06 (Wed) 18:59 Category : 小話

冒頭だけです。
オペラ劇場の記念式典に招待された六代目火影に、イルカが同行する話。
イルカ先生は変化の術で女性になります。悪しからず。

4年前に作ったプロットを引っ張り出しました。

*

「イルカ先生。来週末、空いてる?」
 火影室の大きな窓を背にした席から、カカシが向かいに立ったイルカを見上げて言った。外がよく晴れている所為で、部屋の中が暗く感じる。机の上は珍しく片付いていて、いつも山になっている書類は片手で持てる程度しかない。
 イルカは自分が何故わざわざ呼び出されたのか分からず、質問には直接答えないまま会話を進めた。
「なんですか、急に」
「これです」
 カカシは机の端に置いてあった封筒を取って差し出した。イルカは一歩前に出てそれを受け取る。
 しっかりした厚みのある白い封筒で、既に開封されていたが、封蝋の跡が残っていた。中には二つ折りのカードが一枚。なにかの招待状のようだ。
 取り出して開いてみると、新劇場の特別公演に招待する、という内容だった。日時は来週末。場所は国内だが、木ノ葉隠の里からは少し離れている都市だった。
 招待状の宛名は、六代目火影となっていた。
 国内最大の新劇場が竣工したことはニュースになっていたので知っていた。多分それのこけら落とし公演だろう。
 イルカが招待状から目を上げると、訊く前にカカシが簡単に説明する。
「その劇場の警備計画をうちで請けたんだよね。招待状はそのお礼」
「へえ……」
 イルカはもう一度招待状に目を落とした。
 当日はオペラを公演するらしい。演目くらいは聞いたことはあるが、イルカは見たこともないし、縁のない世界だった。
「イルカ先生、一緒に行こ? 一人じゃ格好つかないし」
 カカシは昼飯にでも誘うような言い草で言った。招待状を見る限り、そんな気軽に行くような雰囲気ではない。
「こういう場所に男二人じゃあ、余計に格好つかないでしょう。誰か適当に連れて行ったらどうですか」
 イルカがそう答えると、カカシは不満そうに視線を向けた。眠そうだった目が、心なしか鋭くなる。
「……ふーん。じゃあ、俺が女性を選んで連れて行ってもいいってこと?」
 カカシは軽い口調で応じながらも、試すようにイルカを見ている。
「いいじゃないですか。カカシさん、仕事で行くんでしょう?」
「じゃあ、誰か見繕って連れて行こうかな。向こうでホテル手配してくれてるみたいだけど、部屋ひとつだけかもな~。わ~。なにか起っちゃうかも~」
 カカシがわざとらしく大きな声で言う。言葉にひとつも真実味がない。
 カカシは机に両肘をついて顎を手で支え、愉しげにイルカを見つめた。
「イルカ先生、それでもいい?」
 カカシが問う。イルカがなんと答えるか、解っているとしか思えない。
 イルカは、答える前に軽く唇を噛んだ。
「い……いいわけじゃないですけど……」
「じゃあイルカ先生、一緒に来てよ。お願い。俺、イルカ先生と一緒に行きたいんです」
 イルカは「でも……」と言いかけたが、モヤモヤした自分の胸に逆らうことはできなかった。
「わかりました。行きます」
「ありがとう、イルカ先生! これ、今回の任務命令書」
 カカシはそう言って、一枚の書類を差し出した。
 任務に行く際に渡される書類だった。緊急の時は省略されるので、任務受付所を通さない火影命令で渡されるのは珍しい。
 イルカは軽く溜め息をついた。最初からこれを出してくれれば、話は早く済んだものを。
 それを言うと、カカシは悪びれもせずに小さく笑い声を立てた。
「そうだろうけどさ、俺はデートに誘いたかったの」
 仕方のない人だ。でもそう思うと同時に、一緒に行きたいと思ってくれたことが嬉しかった。任務じゃなければイルカも大いに浮かれただろう。
 でも本当のことを言うと、カカシと任務だと思うと嬉しかった。若い頃は、カカシと一緒に任務に出てみたいと、密かに思ったものだった。今回はただの同伴だとしても、その夢が叶う。
 イルカは任務命令書に目を通した。任務の概要と補足事項が簡潔に書かれている。六代目火影の護衛任務ということになっていた。最後に『当該者は任務中は常に女性の姿であること』と記されている。女性であった方が都合がいいのだから仕方ない。
 カカシは頬杖をついて、イルカを黙って見ている。イルカが任務命令書から目を上げると、目が合ってカカシが笑った――ように見えた。
 目を離した隙に、イルカの手から任務命令書が抜き取られる。書類は、カカシの手の中にあった。ぴらぴらと紙が揺れる。
「――ただし、同伴者として連れて行くには審査があります。同伴者は六代目火影に相応しくなければならない」
 カカシが改まって言った。相応しい、というのは見た目の話だろう。イルカが条件を満たせないのなら、ほかの誰かにお鉢が回るだけだ。
「審査基準は?」
「そうだねえ……俺の気分?」
 イルカは仕方なく両手で印を組んだ。目を閉じて、イメージを練り上げ、ゆっくり息を吸う。こんな気合を入れて変化の術を使うこともないだろう。
 術の発動と共に空気が弾ける音がする。曇った視界が晴れると、カカシがじっと見つめていた。
 イルカは、胸に手を当てて静かに息を吐いた。あきらかに肉の付き方が違う。自分の体なのに、少しそわそわした。
「……これでどうでしょうか」
 カカシは、イルカを頭からつま先まで、遠慮なくじっくり眺めた。まとわりつくような視線が、恥ずかしさと僅かな興奮を呼び起こす。
「うん……、いいですね。合格」
 カカシは任務命令書を改めてイルカに差し出した。イルカがほっと息をついて命令書に手を伸ばす。すると、カカシが声を張り上げた。
「サクラ、いの! 入って!」
 それを合図に火影室の扉が開く。
「はーい!」
 入って来たのは、サクラといのの二人だった。イルカの姿を見てニヤァと笑顔を見せる。イルカは思わず半歩下がった。
「じゃ、あとよろしくね」
 カカシが二人に向かって言った。イルカにはなんの説明もない。
「はい。それじゃ、イルカ先生、行こ」
「えっ? 行こって? ちょっと……」
 教え子二人がイルカの両側に来て腕を掴む。カカシは手を振って見送るだけだった。
 サクラといのは、火影室の斜向かいにある小会議室にイルカを連れ込んだ。十数名しか座れないような会議室で、長机が部屋の端に寄せられていた。そこに女物のフォーマルなドレスが何着も並べて置いてある。横にはハンガーラックが二つあり、そこに様々な衣装がぎゅうぎゅうに詰められて掛かっていた。その下には靴も並んでいる。
「これは……」
「今からイルカ先生の衣装選びをするのよ!」
 サクラが『逃げるのは許さない』とばかりに、部屋の入口への導線を塞ぐように仁王立ちした。いのがイルカの横を通って、並べられたドレスへと向かう。
「私これ着たーい! いいなあ! あっ、ねえねえ、イルカ先生、これは?」
 いのがテーブルからドレープたっぷりのドレスを一着取って、イルカの体に合わせた。
「ちょっと! なにこれ? どういうことだ?」
「えっ? イルカ先生、六代目に付いて式典に出るんでしょう? ドレスコードあるから選んであげてって、カカシ先生が」
「式……典……」
 イルカは手にしたままの任務命令書をもう一度読み直した。『新劇場開館の記念式典』と確かに書いてある。さっきは読み飛ばしていた。
「イルカ先生はどんなのがいい?」
 二人はお人形遊びでもするようにイルカの衣装選びを始めた。ドレスをとっかえひっかえ押しつけられ、二人のお眼鏡に敵った衣装には実際に袖を通した。
 二人が次のドレスを選ぶ間、イルカはビスチェを身に着けた姿で所在なく立っていた。下着も女性物になるのは仕方ないが、思っていた以上に心許ない。
 二時間近く拘束され、イルカはカカシの誘いを受けたことをすっかり後悔していた。イルカが疲れてうんざりしていると、会議室のドアがノックされた。顔を見せたのはカカシだった。
「六代目!」
「入っても平気?」
 衣装を脱いだばかりだったイルカの姿を見て、カカシが少し気まずそうに尋ねた。そんなこと、別に気にしなくてもいいのに。イルカはドレス用のロングショールを腰に巻いた。
「どんな感じ?」
 カカシが部屋に入ってくる。
「あれもこれもよくって、決まらないんですうー」
「これか、これがいいと思うんだけど……」
 いのとサクラがカカシに説明している。イルカはもう、どうでもよくなっていた。
「六代目はどっちが好みですか?」
「うーん。そうだねえ」
 カカシはドレスを眺めてから、イルカをじっと見つめた。
「こっち」
 カカシが一着のドレスを指差す。スカート部分に大きくスリットが入っている、黒いロングドレスだった。腰回りは体に沿ったデザインで、武器を隠し持つにはややそぐわない。
 イルカの側で、いのがキャアとはしゃいだ声を出した。
「ほらあ! わたしの勝ち!」
「チッ」
 サクラが機嫌悪く舌打ちをする。二人はカカシがどっちを選ぶか勝負していたらしい。
 二人は衣装が決まると、次はアクセサリーだと言って部屋を飛び出していった。装飾品はこの場に用意されていなかったので、今から持って来るのだろう。まだ続くのかと思ってイルカは溜め息をついた。
「カカシさん……思いっきり自分の趣味で選んだでしょう?」
「ま、どっちが好みか聞かれたんで……。でも何かあった時、こっちのドレスの方が動きやすそうだから」
 カカシの選択は意外と合理的だった。カカシの趣味だと言い切った自分が恥ずかしくなる。
「どうせ移動中はコート着るんだし、ドレス姿でいる時間は短いと思うよ」
 カカシは目の前まで来ると、イルカの腰に手を滑らせて抱き寄せた。なんだかいつもと手付きが違うように思える。壊れ物でも扱うようにやさしくて、少しくすぐったかった。
「わ……カカシさん……」
 胸や腹だけでなく、脚も触れ合う。腰に巻いたやわらかいショールが太股の内側をくすぐる。
 思わず腰を反らしたイルカに、カカシは静かに顔を近づけた。マスクを引き下げ、唇を寄せる。カカシはイルカの唇を開かせてゆっくり舌を浚ったが、思っていたより早く離れていった。もの寂しさが口の中に残る。
「……どうしたんですか?」
「うーん。なんかね……浮気してる気分」
 カカシが困ったような顔で言った。そんなこと言われると思ってなくて、イルカはカカシをじっと見つめた。さっきはあんなに見ていたくせに、今は目を逸らされる。
「ぷっ……ふふ。なにそれ」
 イルカはくすくす笑うと、カカシの肩を引き寄せて、息を潜めながら顔を近づけた。
PR
n-caramelizing

日記です。
節操なく色々好きです。で、飽きっぽい。
二次小説で腐った妄想たれ流してます。なんていうか、ごめんなさい。
Website nauwe
どうでもいいツイ垢 @sawaragomu
らくがきポイポイ用 ポイピク
委託通販 フロマージュ様
既刊情報
くるっぷ

グーグルフォーム作りました。
ご意見ご感想/連絡用フォーム

Wavebox
ブログ内検索

Powered by [PR]

忍者ブログ