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日記です。 読み捨てて頂ければ幸い。

将棋してる話の続き

2024.04.22 (Mon) 22:35 Category : 小話

カカシとシカマルが将棋してる話の続き。書き途中のカカイルです。

*

 もうすぐ昼休みを迎える火影室は春の陽気もあって穏やかだった。火影室の隣にある事務室でも事務員らがお喋りしながらのんびり仕事をしている。イルカは事務室に顔を出してすっかり顔見知りの彼らに軽く挨拶してから、火影室へと足を向けた。
 アカデミーの入学式から二週間が経ち、火影は新入生の様子を知りたいとイルカを呼び出した。ついでにランチを一緒に……と誘われたのだが、恐らくカカシの目当てはランチの方だろう。イルカと一緒に昼休みを過ごしたいが為に理由をつけて呼び出したと思われる。
 イルカは火影室の前に立つと、扉を軽くノックした。すぐに部屋の中からカカシの声が返って来る。
「失礼します、六代目」
 イルカは扉を開けて火影室に入った。
 室内にはカカシの他に、火影補佐であるシカマルの姿があった。シカマルは部屋に入って右手の壁際に設えてある書棚の前で、棚に向かって立っている。書棚の整理でもしているのかと思いきや、じっと立っているだけだ。
「来るついでに任務受付所から報告書を持ってきました」
「イルカ先生。わざわざありがとう」
 席に座っていたカカシが言った。イルカはカカシの前まで進みながら、書棚の前に立つシカマルに目を向けた。イルカからはシカマルの背中しか見えない。
 どうしたのかカカシに無言で尋ねてみたが、カカシはシカマルの方へ視線を向け、首を傾げただけだった。何も分からない。
 イルカが持ってきたファイルをカカシの前に置くと、それまで書棚を向いていたシカマルが体の向きをくるりと変えた。それでイルカの姿を目にし、初めて気づいたかのように挨拶をした。
「あっ、イルカ先生、お疲れっす。邪魔してスンマセン。オレはもう行くので、ごゆっくり」
 シカマルはそれだけ言うと機嫌よく部屋を出て行った。
 イルカは教え子に言われた『ごゆっくり』という一言に固まっていた。カカシとの関係は大っぴらにしていないし、シカマルも別にそういう意味で言った訳でもないだろうが、イルカの顔は赤くなった。
 シカマルが見ていた書棚には、どういう訳か将棋盤が置いてあった。書棚の中段には本ではなく巻物が幾つか積み重ねてられており、半分ほどの空いたスペースに将棋盤が置いてあった。盤と言っても小ぶりの簡易なものだ。畳んで持ち運びできる将棋セットだろう。
 シカマルが真剣に見ていたのはその盤面だった。
「なんですか、あの将棋盤」
 イルカが尋ねると、手元のファイルを開いて見ていたカカシは椅子の背もたれに寄り掛かった。書棚へと目を向ける。
「あれ? シカマルと俺が勝負してるの」
 イルカはそれを聞いて少し驚いた。カカシから対局を言い出すはずが無いだろうし、きっとシカマルが勝負に誘ったのだろう。カカシならなんやかやと理由をつけて断ると思っていたので意外だった。
 カカシは不機嫌そうに半眼になってじっとイルカを見ている。
「イルカ先生が、俺が将棋できるってシカマルに話した所為だからね」
 カカシが然も迷惑を被ったというようにイルカに向けて言った。
 確かに、先月くらいにシカマルにカカシのことを少し話した。彼の上官だったアスマとカカシが仲が良かったと知れば、シカマルも少しは仕事がしやすくなるかと思ったのだ。
 余計なお世話……とは直接言われてはいないが、カカシには迷惑だったかも知れない。カカシにも、部下と交流する良い機会だと思ったのだが。
「はは……すみません。でも断らなかったんですね」
 カカシはイルカの顔をじっと見て、何故か言葉を濁した。目を逸らすように将棋盤の置いてある書棚の方へ視線を動かす。
「うん。まあ……将棋の相手いなくて困ってたみたいだし、頭を使うには良い訓練だから」
 カカシは何故か言い訳でもするように答えた。
 素直ではない人だ、とイルカは思った。きっとシカマルと将棋がしてみたくなったのだろう。イルカは笑って「そうですか」と穏やかに答えた。
 カカシとシカマルの対局はなんとものんびりしたものだった。シカマルが火影室に来た時に一手進め、カカシが席を立ったついでに一手進めることになっていた。シカマルは朝昼夕と火影室に顔を出しているようで、今し方の一手は昼の分らしい。一局終えるのにひと月かかりそうだった。
 盤面が気になったイルカは、書棚の前まで歩いていった。まだ序盤でどちらが優勢ということもなく、お互いに陣を組み立てている最中だった。この様子だとシカマルが先に仕掛けることになりそうだ。
 イルカが盤面に見入っていると、カカシが席から声を掛けた。
「イルカ先生、次の一手動かしていいよ」
「えっ!? カカシさんの勝負でしょ?」
 イルカも自分なら次はここに指すかなと盤面を見ながら考えはしたが、流石に手を出すつもりはなかった。
「イルカ先生、シカマルと将棋したことある?」
「無いですよ」
 イルカがシカマルと将棋を指したことは一度も無かった。将棋ができると話したこともない。
 家庭訪問の時にシカマルの父に将棋の相手をさせられたこともあったが、家庭訪問当日はシカマルは決まって何処かへ逃げていたから、家庭訪問がそんなことになっていたとは知らないはずである。知っていたとしてもイルカは毎回負けていたのでヘボ指しだと思われているだろう。
 だからシカマルから将棋に誘われたことはない。
「だと思った。俺、あなたが三代目の茶飲み友達で、そこそこ出来るって言わなかったんですよ?」
 まるで恩でも着せるようにカカシが言った。イルカは別に隠していた訳でもないのだが、シカマルには黙っていたのだから同じことだろう。
 それより……イルカはカカシにそっと目を向けた。
 将棋は少しできるとカカシには話したが、互いの実力は知らないままだった。イルカが三代目火影のお茶休憩に付き合っていたことも、その時たまに将棋の相手をしていたことも、カカシは知らないはずである。
「……なんでも知ってますね。カカシさん」
「これでも火影なので」
 カカシは珍しく得意げにそう応えてから、すぐに冗談だと言った。
「前に三代目から聞いたからね。いや、シカクさんだったかな」
 イルカは二人の名前を聞いて一瞬懐かしくなったが、カカシの視線に気づいて思わず顔が引きつった。カカシは“俺はその話イルカ先生から聞いてないですが?”と詰るようにイルカを見ている。
 イルカは咳払いをしてカカシの視線をいなした。
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