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n - caramelizing

日記です。 読み捨てて頂ければ幸い。

はぴば

2023.11.29 (Wed) 15:30 Category : 小話

カカ誕…
いま何月何日か言ってみな?(すみません…
半分はポイピクに投げてた気がします。





*
 頼みがあるとカカシの忍犬たちがイルカの家にやって来たのは、九月十四日の早朝のことだった。
 まだ寝ていたところに玄関の呼び鈴が一回だけ鳴らされ、起きたイルカが目をこすりながら玄関のドアを開けてみると、そこには見慣れた忍犬が八頭、大人しく座ってイルカが出てくるのを待っていた。
 外はようやく白み始めた頃だった。いつもならイルカもまだ寝ている時間だ。そんな時間にカカシの忍犬たちが何の用かとイルカは疑問に思った。
 彼らが早朝に散歩していることは知っていたのでそのお誘いかとも思ったが、肝心のカカシの姿は見当たらない。まさかカカシの身に何かあったのかと一瞬嫌な思考が過ぎったが、彼らの雰囲気からするとそんな切羽詰まった状況でも無さそうだった。
 でもイルカに用があって来たことは確かだった。
「おはよう。こんな早くにどうしたんだ?」
 イルカは玄関を出た所でしゃがんで忍犬たちに挨拶をし、傍に寄って来た子を順番に撫でた。すると撫でられてはしゃいでいる子たちの後ろにいた一匹が、イルカの方を見上げて「頼みがあって来た」と言った。
「頼み?」
「そうなの。おれたち、イルカにお願いがあって来たの」
 ちょうどイルカの手に撫でられていた人懐っこい忍犬が、潤んだ目でイルカを見上げてそう言った。
 カカシの忍犬たちが揃って自分に頼みとは、イルカは一層不思議に思った。カカシと付き合い始めてから忍犬を家に泊めることも多かったが、こんなことは初めてだった。イルカは彼らを家に上げて話を聞くことにした。
 カカシとの交際は春の終わり頃から始まり、イルカはカカシと親しくなると同時に彼の忍犬たちとも仲良くなった。一緒に散歩に行くこともあるし、カカシからの伝言を届けて貰うこともある。忍犬が家にやってくるとそのまま泊まっていくのが常で、イルカの家には忍犬の為の物が増えた。いつ来てもいいように犬用の食糧も常備してある。
 そんな状態なのでカカシは迷惑を掛けていると思っているようだが、イルカはそんなふうに思ったことはなかった。動物は好きだし子供の頃から忍犬や忍犬使いにそこはかとない憧れを持っていた為、彼らと触れ合ったり一緒に過ごせるのは楽しかった。それに、彼らはカカシとの仲をより深めてくれる。
 カカシは任務で里にいないことも多いが、その間まめに忍犬を寄越した。イルカのところに忍犬が来るのは、きっと火影への報告のついでだろう。伝令の任務を終えた忍犬はイルカの元でのんびり休んでいく。
 カカシと一緒に過ごせなくても、彼の忍犬と過ごす時間が何故かカカシとの距離を縮めてくれた。付き合って数ヶ月、カカシと共に過ごした時間は僅かだが、そうとは思えないほど親密になった。イルカは既に心も体もカカシに許しているし、カカシも他人には見せない顔をイルカには見せてくれる。カカシの忍びとしての二つ名だけを知っていた頃とは印象が全く違った。
 カカシがイルカの家に来て二人きりになると、決まって時間をかけて体を求め合った。それは忍犬たちと過ごした時間があるお陰だとイルカは勝手に思っていた。
 忍犬たちと仲良くなっただけカカシとも仲良くなりたいし、それ以上に深い仲になりたい。そうなれると思っていたし、実際に触れ合う前から「なれた」とイルカは勝手に思っていたくらいだった。そして事実、心も体も深く繋がる関係になれた……と思う。
 忍犬がいなくても付き合うことになれば今と同じように体は繋げただろうが、そこまで親密にはならなかったと思う。なっても時間が掛かっただろう。イルカは忍犬を通してカカシを知り、親しみを覚えて、より好きになったのだった。
 それもあってイルカはこの忍犬たちのことをカカシの一部だと思って接していた。カカシにとって大事な彼らは、イルカにとっても可愛くて大切にしたいものだった。
 イルカは忍犬たちの足をきれいに拭いてやってから家に上げた。飲み水を用意し、お菓子を一粒ずつあげる。改めて話を聞く頃には、忍犬たちはイルカの部屋で思い思いに座ったり寝そべったりしてすっかり寛いでいた。
 イルカが忍犬たちから話を聞いたところ、「明日カカシの誕生日だから、おれたちも何かお祝いしたい」ということだった。だからイルカに手伝ってほしくて家までやって来たらしい。
 話を聞いたイルカは、かわいい子達だなと思った。カカシのことが大好きなのだろう。付き合い始めて傍で見ていると、彼らの間にある絆はイルカには羨ましく思えることが多かった。イルカが彼らとどんなに仲良くなっても彼らの間には割って入れないし、彼らの絆以上のものをイルカはカカシと、或いは忍犬たちと築くことはできないだろう。そう思うと少し寂しくなる。
 でもイルカはカカシとカカシの忍犬たちが大好きだったから、彼らの頼みとあれば喜んで引き受けた。それに、イルカにとっても都合が良かった。
 カカシの誕生日が今月の十五日であることはイルカも知っていた。知ったのは付き合う前の何気ない会話の中で、付き合い始めてからはカカシの誕生日が来るのを楽しみにしていた。一緒に過ごせたら良いなと密かに思っていたのだ。
 しかし任務で忙しいカカシと先月の末から会う機会が無く、誕生日に一緒に過ごす約束さえちゃんと出来ていなかった。カカシが誕生日に里に戻っている予定なのかも知らなかった。
 だから忍犬たちの申し出はイルカにとってありがたかった。カカシは今日のうちに里に戻るらしい。既に火影にもそう報告をしているようだ。
「じゃあ、明日みんなでカカシさんの誕生日祝いをしよう」
 早速忍犬たちと作戦会議をして、明日の夜にイルカの家でささやかな誕生日会をすることが決まった。それなら料理を用意しないとな、とイルカが呟くと、それを聞きつけた忍犬が「ごちそう! ごちそう!」と囃し立てた。
「ごちそうか……キミらの分はどうしようか。いっしょに美味しいもの食べたいよな」
 イルカがそう言うと、忍犬たちの目が輝いた。
「肉!」
「骨ついてるやつ!」
「おかし〜!」
 更には、一緒に買い物に連れて行ってくれたら自分で選ぶ、と言う子までいる。イルカは困った。彼らが食べていい物はイルカには判断できない。
「カカシさんに聞く訳にもいかないし……そうだ、キバに聞いてみようか」
 イルカは教え子の一人を思い浮かべた。忍犬のことなら彼に聞くに限る。忍犬の言う『ごちそう』についても教えてもらえるだろう。
「今日、犬塚家に行ってから買い物に行くけど、誰かついて来てくれる?」
「はーい! おれ行く!」
「ぼくも!」
 買い物は大荷物になりそうな予感がしたので、もう一匹選んで一緒に行くことにした。残りの忍犬には別の買い物と留守番をお願いして、明日は忍犬たちにカカシを連れて来てもらうことになった。
「でも明日急に言って、カカシさんうちに来てくれるかな?」
「問題ない。おれたちが引きずって来る」
 忍犬たちが物騒なことを言う。八匹で掛かればカカシを文字通り引きずって来れるだろうが、本人の誕生日にしていいことではない。
「いや……それはどうかと」
「心配しなくてもカカシなら喜んで来るよ!」
 イルカの傍にいた一匹が笑顔でそう言った。
 そうだろうか。それなら良いのだが……イルカは少し心配になりながら、明日を楽しみにしている忍犬の頭をやさしく撫でたのだった。

*

 買い物と料理の仕込みは前日のうちに済ませて、当日は少し早めに仕事を終えたらすぐに家に帰り、カカシを迎える準備をした。昼間のうちに忍犬たちがカカシに話を通してくれているはずだが、本当に来てくれるのだろうかとイルカは最後まで心配していた。
 その日忍犬の半数はイルカの家で留守番をしていたが、日が暮れる頃になるとカカシを呼んでくると言って部屋を飛び出して行ってしまった。まさか忍犬たちは本当にカカシを引きずって来るつもりなのだろうかと、イルカは一層不安になった。
 料理の盛り付けが一通り終わった頃に、玄関の呼び鈴が一度だけ鳴った。
 イルカは身につけていたエプロンを放り出して玄関へ向かった。気持ちが先走って勢いよくドアを開けると、そこには忍犬たちを連れたカカシが立っていた。イルカはカカシの顔を見た途端に犬のように飛びつきたくなった。
「カカシさん! 来てくれたんですね。おかえりなさい」
 イルカはカカシを玄関に引っ張り入れてから、足元にいる忍犬たちにもおかえりと言った。
「カカシさんを連れて来てくれてありがとう」
 忍犬たちは揃って褒めてくれという顔をしていたので、イルカはしゃがんで忍犬たちを撫で回した。しかし彼らの興味はすぐに別のものに移った。
 お誕生日会のごちそうの匂いだ。
 家の中からは食べ物のいい匂いがしていて、忍犬たちは早く部屋に入りたくてうずうずしていた。イルカが彼らの足を拭いてやると、忍犬たちは我先に部屋の中へ飛び込んでいく。
 あっという間に玄関から忍犬が居なくなり、イルカは苦笑しながら部屋の中に目を向けた。早く来てとカカシとイルカを呼ぶ声が聞こえる。
 俺たちも早く行きましょうと言いながらイルカがカカシに向き直ると、カカシは玄関で靴も脱がずに突っ立っていた。本日の主役のはずなのに、どこか居心地が悪そうにしている。
「イルカ先生……あいつらが迷惑かけてすみません」
「全然迷惑じゃないですよ。カカシさんこそ、迷惑じゃなかったですか?」
 勝手に誕生日会を開いたことをイルカが心配になって訊ねると、カカシは目を丸くした。そしてイルカを見つめて、すぐに穏やかな表情になる。
「まさか。驚いたけど……すごく嬉しい」
 カカシが少年のようにはにかんだ――ように見えた。マスクをしていたので実際の表情は分からなかった。でもきっとそうだと思い、イルカは初めて見たカカシの表情にどきどきした。
「さあ、上がってください。カカシさん。ごちそうたくさん用意したんですよ。口に合えば良いんですけど」
 いつも食事に使っている小さめの四角い座卓は、料理の皿で埋め尽くされていた。先に部屋にいた忍犬たちは大人しく待っていたり、座卓の周りをうろうろしている。食いしん坊が座卓の上を覗き込もうとしていた。
「ああ、待って。キミたちのは今出すから」
 イルカはキッチンに用意していた忍犬たちの皿を取りに行った。座卓の近くに彼らの皿を出すと、全員尻尾を振って集まって来た。わざわざ犬塚家で聞いてきたスペシャルメニューなのでみんな楽しみにしているようだった。
 もう少しだけ待ってと彼らに伝えてから、イルカはカカシを側に呼んで座卓の前に座らせた。カカシは並べられた料理を見て驚いている。テーブルが小さくて料理の皿を全部出せていなかったが、どう考えても夕飯二日分以上はある。
「これ全部作ったんですか?」
「そうです!……と言いたいところですが、流石に全部じゃないです」
 イルカは照れながら答えた。大半はイルカが作ったが、一部は出来たものを買って来ている。余ったら明日イルカが美味しく戴くつもりだった。
「この子たちのは俺が作ったんですけど、犬塚家で作り方聞いてきたんで大丈夫ですよね?」
 イルカは急に不安になって訊ねた。忍犬たちの食べるものについては、絶対に注意するようにと一番初めに言われていたからだ。
 カカシは忍犬たちの皿を見て、大丈夫だよと答えた。
「ありがとう、イルカ先生。こいつらの分まで……」
「みんなでお祝いするんだし、みんなで美味しいもの食べたいでしょ? それに、カカシさんの誕生日を祝いたいって言ったの、この子たちなんですよ」
 イルカがそう言うと、カカシは意外そうに忍犬たちに目を向けた。忍犬たちは自慢げに胸を張って座っている。カカシは苦笑気味にありがとと言った。
「じゃあそろそろ始めましょうか。お腹すいたし」
 イルカの言葉に忍犬たちがパッと笑顔になる。
「カカシさん、誕生日――」
 おめでとうございます、とイルカが口にすると同時に、忍犬たちが一斉に吠えた。
「誕生日おめでとう、カカシ!!」
 忍犬たちがカカシに飛び掛かる。そうなるとは思っていなかったので、イルカは目の前の出来事に吃驚した。
 忍犬たちはカカシに群がって顔を舐め回していた。カカシは料理の皿が乗ってる座卓にだけは被害を出さないように、はしゃぐ忍犬たちを受け止めている。
 イルカはその様子を笑いながら見ていた。  
 カカシは忍犬たちを落ち着かせると、イルカをじっと見つめた。
「イルカ先生はキスしてくれないの?」
 カカシがこれ見よがしに口元からマスクを引き下げる。露わになったカカシの唇を見て、イルカは思わず唾を飲み込んだ。
「イルカ先生」
 カカシが催促する。
 イルカはカカシの顔を見て意を決すると、身を乗り出してカカシの唇にそっとキスをした。息を潜めて、少しだけ唇を押しつける。
 すぐに離れようと思っていたが、唇が離れる前にカカシに両肩を掴まれて押し倒された。カカシの体が覆い被さり、唇が塞がれた。
「んうっ……、んん……」
 唇を吸われ舌を誘い出され、その声が無意識に甘くなってゆく。イルカは少しも抵抗せずにカカシに身を任せ、自分の体の熱を感じながらカカシの背中にゆっくりと腕を回した。指先でカカシの背中を撫でる。密着した二人の体は、少しずつ熱くなるようだった。
 イルカは、服を着ていることをもどかしく思った。カカシの素肌に触れたくて、シャツの裾から服の下に手を入れる。里一の上忍と称されるカカシの体にも傷跡があって、イルカは指先に触れたその凹凸を無意識に撫でた。
「はあ……カカシさん……」
 イルカは熱くなっている自分の体に恥ずかしさを覚えながら、間近にあるカカシの顔を見上げた。
 カカシはまっすぐにイルカを見つめて、低く甘い声で名前を呼んだ。首筋に震えが走るのを感じながら、目を閉じてまた唇が触れ合う瞬間を待つ……。
 ところが、次の瞬間にイルカを襲ったのは忍犬たちの鼻息だった。吃驚した時には、もう犬の舌で顔を舐め回されていた。
「ちょっ……なにっ、なんで俺まで舐めるんだ!?」
 忍犬たちに寄ってたかって舐められているイルカを、カカシが可笑しそうに見ている。床に腰を下ろして胡坐をかき、自分の膝に肘を置いて頬杖をついていた。
「ふふ。そりゃあ、みんなイルカ先生には感謝してるからね」
「……カカシさんは?」
 イルカは床に仰向けに転がったまま、なんとか一匹だけ捕まえた忍犬を腕に抱きながらカカシに訊ねた。腕の中の忍犬はじたばた動いているし、他の忍犬はまだ飽きずにイルカの顔を舐めたりしていた。
 カカシは笑いながら身を乗り出して、イルカの頭の横に手を突いた。傍にいた忍犬が床に置かれたカカシの手に鼻を近づけている。
「もちろん、俺もしてるよ。ありがと、イルカ先生……こんなに素敵な誕生日は久しぶりだ」
 カカシはそう言って顔を近づけ、イルカの頬に唇を擦り寄せた。イルカは急に照れくさくなったが、もう一度自分からキスをした。イルカの腕に捕まっていた忍犬は、隙を見て抜け出して行った。カカシがイルカに体を寄せる。
 忍犬たちはいつの間にか一歩離れた場所にいて、自分たちだけの世界に浸ってイチャつく二人を満足した様子で見ていた。
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日記です。
節操なく色々好きです。で、飽きっぽい。
二次小説で腐った妄想たれ流してます。なんていうか、ごめんなさい。
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