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日記です。 読み捨てて頂ければ幸い。

二人と二匹

2024.02.24 (Sat) 12:44 Category : 小話

カカイルがネコチャンたちといっしょに寝るだけの話
短いです

*
 今日は帰るって言ってたんだけどな、とイルカは部屋の壁に掛けてある時計を見ながら思った。カカシの帰るという言葉を信じて待っていたが、日付が変わるまで三十分も無い。
 カカシが火影になってからはこういった事が多かった。この時間で帰って来ないのなら何か緊急であったのかも知れない。
 あと少し起きてれば帰って来るだろうかと思いもしたが、口からあくびが出た為イルカは早々に諦めて寝室へ向かった。
 部屋の明かりを消してベッドに潜ると、ふとんを体に掛ける瞬間に猫がベッドに飛び込んで来た。ぼすん、と音を立ててイルカの体の横に着地する。
「わっ。なんだ、今日はいっしょに寝るのか?」
「なん」
 猫が可愛らしい声で答える。ベッドの足下で常夜灯が点いていたが、明かりが少なくてイルカの目には猫の耳と尻尾の生えたまるいシルエットしか見えない。
 撫でるとふわふわした耳と頭の後ろの長い毛足が指先に触れた。猫はもっと撫でろとイルカの手のひらに頭を押しつけて来る。
「相棒はどうした?」
 イルカがもう一匹の猫の所在を聞くと、イルカの足元の方から少し不満そうな鳴き声が聞こえてきた。頭を起こして見ると、ふとんの上、ちょうどイルカのつま先の横に黒い影が丸くなっていた。猫の目が少ない光を集めて反射させている。
「こっち来たら?」
「なあ」
 猫は短く答えただけで、その場から動かなかった。そこで寝ると決めたらしい。そんな彼も朝方にはイルカの頭の横で寝てたりするので、最近はつれなくされても気にならなかった。
 イルカはベッドに体を預けてふとんを被った。すぐ隣には猫が寄り添って寝ている。温かい。
「こっち来ればいいのにね」
「にゃあ」
 側の小さな体から、ごろごろと音が伝わる。意外とうるさいその音を感じながら、イルカは心地よさに意識を委ねて静かに目を閉じた。


 カカシが真夜中に帰宅した時には玄関だけが明るく、部屋の中はもう明かりが落とされていた。玄関の照明の下で腕時計を確認する。既に日付は変わっていて、寝てて当たり前かとカカシは思った。
 物音を立てずに部屋に上がり、暗い居間から引き戸が開けっ放しの寝室を覗く。部屋は広めの居間と寝室に使っている狭い部屋が二間続きで、引き戸でいつでも仕切ることができた。客人が来ない限り寝室の戸は大体開けっ放しになっている。
 ベッドとクローゼットが部屋の大半を占めている寝室で、イルカは既に眠っていた。ベッドの足下で小さな常夜灯がほのかに辺りを照らしている。
 カカシがベッドの傍らまで行って見てみると、イルカの頭の近くとふとんの上で二匹の猫が丸くなっていた。イルカは真ん中に寝ている。
 カカシは溜め息をつくように苦笑した。せっかく帰って来たのに、カカシの寝る場所は無さそうだ。
 疲れていたのもあって、どうしたものかとその場でぼんやり突っ立っていたら、気配に気づいたのかイルカが目を覚ました。影が動き、寝ぼけた声でカカシの方へ話しかける。
「んぁ……カカシさん? おかえりなさい……」
 カカシはベッドに腰掛けて、イルカの顔に手を伸ばした。指先が頬に触れる。
「ただいま。俺の寝る場所ある?」
「んん……」
 イルカは寝ぼけながらベッドの片側へずれて場所を空けた。空いたスペースでは猫が悠々と寝ていたが、イルカは猫も自分の方へと抱き寄せた。目を覚ました猫が、うにゃあと抗議の声を上げる。
「カカシさんはここ……」
 イルカがベッドシーツの上に手を置いて自分の横を示した。カカシが動かないでいるとイルカは手を伸ばしてカカシの腕を掴んだ。
「はやく来て」
 イルカが腕を引く。カカシは強引なイルカの手を取ってやめさせると、その指先に唇を近づけてキスをした。イルカの指先がカカシの唇を撫でる。
「イルカ先生。俺、風呂入ってくるから……少し待ってて」
「ん……」
 イルカは寝ぼけたまま返事をして、ふとんに包まってしまった。猫たちもイルカの側にくっついて寝ている。
 カカシは寝息を立てているイルカを穏やかに眺めてから、風呂に入りに行った。
 ところが風呂を済ませて戻って来ると、カカシの寝る場所はまたもや無くなっていた。イルカが寝ている横のスペースで猫二匹がのびのびと寝っ転がっていた。
 カカシは苦笑しながらベッドに腰を掛けて、場所を取っている彼らに声を掛けた。
「悪いけど俺も入れてくれる?」
「ふにゃ……」
 一匹は「なんだよ」と文句を言いたげに体を起こすと、ふとんの下に頭を入れイルカの足下の方へ潜って行った。もう一匹は起きそうになかったのでカカシが腕に抱いてベッドに入った。体に掛けるふとんは全部イルカが持ってっている。
「俺にもふとん貸して、イルカ先生」
 カカシがふとんの端を軽く引っ張ると、一人でふとんに包まっていたイルカがもぞもぞ動いて、隣で横になっているカカシに体を寄せた。
 カカシは猫といっしょにふとんの中に入る。イルカは温もりを求めるようにカカシに体を擦り寄せた。起きているわけではなさそうだった。
「ん……カカシさん……」
「ふふ。イルカ先生、おやすみ」
 イルカからは寝息が返ってくる。腕の中からはうにゃうにゃと声が聞こえ、いつの間にかもう一匹の猫もイルカとカカシの間に潜り込んでいた。
 カカシは口元に笑みを浮かべながら、猫たちにもおやすみと囁いた。
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